“もったいない”の心が活きる助け合い 全国に広がる「フードバンク」活動

世界には食糧不足で苦しんでいる人たちがたくさんいます。
世界最大の食糧輸人国である飽食社会・ニッポンも例外ではありません。
それなのに毎日、まだ食べられる食品が大量に廃棄されています。
食べ物を粗末にすることは、日本ではもっとも戒められてきた行為です。
いま「もったいない」精神でフードバンク活動が全国規模で広がっています。

フードバンクとは・・・

倉庫にストックされた支援物資の山
倉庫にストックされた支援物資の山

  食品メーカーや外食産業では、品質には問題ないものの、製造・流通などの過程で余剰食品や規格外商品などの商品価値を失った食品が発生します。まだ充分な安全性があり、美味しく食べることができるにも関わらず、大量の食品・食材が廃棄されています。フードバンクとは、従来は廃棄されていたこうした食品や販売店舗で売れ残った賞味期限・消費期限内の食品の寄贈を受け、無償で必要としている生活困窮者や社会福祉施設、団体へ再分配するボランティア活動、およびその活動を行う団体のこと。形が悪い、規格外などの理由で収穫・出荷できない農作物、一般家庭で余った賞味期限内の食品も対象となります。寄贈された余剰食品を一時的にストックし、必要なところへ配分することから、「フードバンク(食品の銀行)」とよばれています。

北海道内のフードバンク団体一覧

フードバンク札幌 札幌市北区北21条西3丁目1-12
電話(011)709-3510/FAX(011)764-4854

ハンズハーベスト北海道 札幌市中央区南24条西15丁目1-2
電話/FAX(011)533-3375

フードバンク道央 千歳市長都駅前1丁目12-14
電話/FAX(0123)27-3341

もったいないわ・千歳 千歳市新富1-19-9
電話:090-2818-8253/FAX(0123)23-0363

フードバンク北海道ネットワーク 上川郡清水町31-86
電話(0156)旭山63-3009/080-1877-6513

世界の共通語“MOTTAINAI”

  フードバンク活動は、1960年代にアメリカではじまりました。日本では2002年、アメリカ人留学生が東京都台東区に日本初のフードバンク団体を設立。後に団体名を「セカンド・ハーベスト・ジャパン」と改称しました。2007年頃から全国規模で広がりをみせはじめました。フードバンク活動は、日本の「もったいない」精神が根底にあります。
  「もったいない」という言葉は、いまや世界中に広かっています。当時ケニアの環境副大臣でノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんが2005年に来日した際、この言葉に感銘を受け、国連の会議で紹介したのがきっかけです。会場を埋めた参加者とともに環境保護の合言葉として「MOTTAINAI」が唱和されました。

“もったいない”を“ありがとう”に

  日本は、先進国の中で最低レベルの食糧自給率(40%)であるにもかかわらず、食ベずに捨てられる食品が大量発生している飽食国家です。農林水産省によると、日本で1年間に企業や家庭から出る食品廃棄量は年間約1800万トン(平成21年度)。このうち、食ベられるにもかかわらず廃棄されている食品ロスは、年間500万~800万トンにのぼると推計されています。これらの中にはラベルの印字ミスやパッケージの汚れといった品質、賞味期限とは関係がない食品も含まれます。この量は日本のコメ収穫量約850万トンに匹敵します。このような背景から、フードバンク活動は「もったいない」という日本人の生活哲学を行動で示す取り組みとして、今後ますます注目されるとともに、社会的弱者の命を支える重要な活動となっています。
  また、食品の提供を行う企業にとっても、廃棄に掛かる金銭的なコストを削減できるだけでなく、食品廃棄物の発生を抑え、福祉活動に貢献しているという面でCSR(企業の社会的責任)の取り組みともなり、企業イメージの向上につながるメリットがあります。
  世界共通語となった「もったいない」という言葉を「ありがとう」に変えるのがフードバンクなのです。

 

特定非営利活動法人 札幌市福祉生活支援センターフードバンク札幌

運営委員会発足のきっかけ

農家から寄贈された新鮮な野菜の数々
農家から寄贈された新鮮な野菜の数々

  札幌市北区の住宅街の一角にある札幌市福祉生活支援センター法人本部を訪ね、柿崎勲理事長に話を聞きました。法人の事業は、児童施設、障がい者施設、高齢者施設、就労支援など多岐にわたります。生活困窮者のワンストップサービス、セーフティネットという視点に立って、すべての事業がつながっています。平成24年にはフードバンク札幌を立ち上げました。タイトルに使わせていたたきました『“もったいない”の心が活きる助け合い』は、フードバンク札幌のスローガンです。フードバンクをはじめたきっかけは何たったのでしょうか。「少し前にタイガーマスク現象というのがありましたでしょう。そのタイガーマスクのホームページに「たんぽぽ苑」が取り上げられたことがあるんです。それがきっかけで『子どもたちのために』と全道、全国から、さばききれないほどの支援物資が届きました。仲間の養護施設などに差し上げたりしていたんですが、組織化しないとやっていけないということで、運営委員会を立ち上げました」。

慎重に情報管理を徹底

「フードバンク札幌」の活動の流れ

  現在、食品提供のメイン企業となってくれているのは、ジェイアール生鮮市場(札幌市内7店舗)です。今年5月から定期的に食品を寄贈してくれることになりました。フードバンク札幌では企業と、提供食品の引き取り日時や方法、寄贈された食品を転売、換金しないことなどの覚書を交わします。また、ホームページ等で協力企業の社会貢献、環境問題に取り組む姿勢など、企業イメージの向上に資することをアピールしています。「しかし、企業名を公表することを心良しとする企業ばかりではありません。善意で提供しているという意味合いもあり、しょせん余りものだからという意識があるんですね。なかには、それをわざわざ公表したくないという企業もあります」。
  また、支援を希望される側とは「食品等の提供に関する確認書」を取り交わし、無償の支援物資は非営利活動のみに利用されること、提供先に関する情報を正当な事由なくして第三者に漏らさないことなどを確認します。「社会福祉法人などでは、公表されても問題ないかもしれませんが、生活困窮者や生活保護受給者に対しては、個人情報の守秘義務がありますので、情報管理は特に慎重に取り扱っています」。

日常から一歩踏み出すこと

農業体験プログラムで収穫のお手伝い。青空のもと利用者の表情も明るく晴々
農業体験プログラムで収穫のお手伝い。青空のもと利用者の表情も明るく晴々

  たんぽぽ苑の子どもたちや障がい者施設の利用者たちが農家の収穫を手伝いに行く農業体験プログラムがあります。さらに、収穫した野菜や果物を使っての調理体験もあります。農業体験も回数を重ねるにつれ、素直で明るい笑顔がどんどん増えていくといいます。日頃、施設に引きこもりがちな参加者たちにとって、外に出て人と話をし、何かを共に行うということが新たな発見と経験となり、また次の一歩に繋がっているようです。帰りには出荷できない収穫物をたくさんいただいて帰ります。農家や牧場で、仕事や食に関する話をたくさんしていただき、帰りの車の中で「感動した」「良いお話が聞けた」という会話が交わされることもあります。それを聞くと、「やって良かったとしみじみ感じる」とホームページのブログでスタッフが報告しています。

フードバンクの今後の課題

大きなワゴン車に満杯の物資を積んで届けてくれた食品企業
大きなワゴン車に満杯の物資を積んで届けてくれた食品企業

  フードバンク札幌の活動は、社会貢献、地域貢献としての無償のボランティア活動です。フードバンクの一番の課題は、人件費やガソリン代、保管する倉庫の賃貸料などコストはかかっているにもかかわらず、まったくのボランティア活動だということです。今のところ国からも自治体からも助成金は一切ありません。「職員が交代で行ってはいるんですが、それでも間に合いませんので、ボランティアに頼らざるを得ません」。いま一番必要としているのは、ドライバーのボランティアだそうです。
  現在、フードバンクの全国組織は、山梨県の全国フードバンク推進協議会と東京都のセカンド・ハーベスト・ジャパンの2団体あり、前者は消費者庁、後者は農林水産省に働きかけてはいるのだそうです。ところが双方はライバル関係にあって、綱引きしている状態です。対立している場合ではないと思うのですが・・・。双方から勧誘を受けていて、どちらに加盟するか悩んでいるフードバンク団体もあります。
  実際に困窮して助けを必要としているのは市民です。その市民を支援しているのがフードバンク。フードバンクの活動が全国的な広がりを見せるなか、行政からの助成があってしかるべきではないでしょうか。


特定非営利活動法人 札幌市福祉生活支援センター

札幌市北区北21条西3丁目1-12  電話(011)726-2829 FAX(011)726-7990

青少年自立援助ホーム「たんぽぽ苑」 外観
青少年自立援助ホーム「たんぽぽ苑」

平成19年にNPO法人設立。新しい公益の担い手として、生活弱者の方の社会的、経済的自立を図るため「人間の中へ、そして一人のために」を合言葉に、福祉貢献の一翼を担っています。平成24年にはフードバンク札幌運営委員会を立ち上げ、ボランティア活動を展開。青少年や障がい者、高齢者等に対する自立支援のためのセーフティネット機能を発揮しています。

【事業概要】
フードバンク札幌運営委員会/
青少年自立援助ホーム「たんぽぽ苑」/
生活支援相談センター/障がい者支援委員会/
就労支援推進委員会/高齢者共同生活ハウス/
あんしん住居支援委員会