福祉の現場から

母子家庭等の「保護」から「自立」へ ひとり親世帯の現状と対策

1960年以前の母子家庭は、夫の戦死などの死別が多かったのですが、
1990年代以降は、不況も影響して離婚が原因のひとり親世帯が急増しています。
夫婦が離婚する場合、子どもの8割以上は母親が親権者となっています。
母子家庭の8割以上は就労していますが、非正規で低賃金の仕事が大半です。
「母子家庭の貧困」「子どもの貧困」に社会的関心が向けられるようになりました。
父子家庭を含めた「ひとり親世帯」の現状と課題、必要とされる支援策を取材しました。

母子福祉法からの変遷

  平成23年度厚生労働省の調査によると、ひとり親世帯数は母子世帯数123.8万世帯(全世帯の2.3%)、父子世帯数22.3万世帯(同0.4%)となっています。日本における母子世帯の支援策は、母子寡婦福祉法と児童扶養手当法の2つの法律を中心に施行されてきました。前者の母子寡婦福祉法は、戦前の貧困母子対策、戦後の戦争未亡人対策からはじまり、昭和39年に「母子福祉法」が成立したことをルーツとします。その後、昭和56年に同法を改正した「母子及び寡婦福祉法」が成立しました。
  この「母子及び寡婦福祉法」は平成14年に大改正が行われました。それにより平成15年4月以降、母子家庭支援策はそれまでの「児童扶養手当中心の経済支援」から「就労・自立に向けた総合的支援」へと施策を強化し、(1)子育て・生活支援、(2)就業支援、(3)養育費の確保、(4)経済的な支援を4本柱に施策を推進しています。平成26年には、ひとり親家庭への支援を拡充するとともに、子どもの貧困対策に資するため「母子家庭」を「母子家庭等」という表現に改め、「等」に父子家庭を含み対象に加えました。ここでやっと父子家庭が登場します。また、母子家庭等同士の交流事業や親・児童に対する相談支援などを生活向上事業として法定化し、「母子及び父子並びに寡婦福祉法」に改正されました。

ひとり親家族の貧困問題

  ひとり親家庭の相対的貧困率は、平成21年調査の62.0%から平成26年47.7%へと14.3ポイント改善(平成28年総務省発表)されましたが、総世帯の相対的貧困率9.9%とは大きな開きがあります。最近では「子どもの貧困率」も問題となっています。経済的支援策として児童扶養手当は、全額支給の所得基準が年収57万円(源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」)と低いことに加えて、2人目、3人目の加算額が少なすぎて経済的支援の機能を十分に果たしているとはいいがたいとして、支援団体などが所得制限の緩和、加算額の増額を要求していました。平成28年4月から1人目は42,330円、平成28年8月から2人目10,000円、3人目6,000円と加算額が倍増されました。平成29年4月からは、物価の上下に合わせて支給額が変わる「物価スライド制」が加算額に導入される予定です。
  離別した夫から養育費を受け取ることができている母子世帯は、2割弱に過ぎないことも貧困の大きな要因です。離婚しても双方の親には、子どもが成人するまで養育義務があるにもかかわらず、ほとんどの場合、法的な強制力もなく、社会的に制裁されることもなく放置されているのが現状です。
  母子世帯の就労率は80.1%と高いにもかかわらず、平均年間就労収入は181万円程度です。低賃金の理由は、正規職員・従業員が39.4%、パート・アルバイト等が47.4%(派遣社員を含むと52.1%)と、一般の女性労働者と同様に非正規の割合が高いことにあります。安定就労と賃金アップにつながる支援策が求められています。その中で、看護師、保育土、理学療法士、作業療法士、介護福祉士などの資格を取得するための養成機関に入学すると、非課税世帯の場合、2年間月額141,000円給付される「ひとり親家庭高等職業訓練促進給付金」制度などもありますが、まだまだ具体性のある有効な支援策は乏しいといえます。

相談体制の充実が必要

  「貧困」を経済的貧困に限定してとらえるべきではありません。情報の貧困、支援を期待できる人間関係の貧困、文化的生活の貧困も視野に入れて支援策を講じる必要があります。ひとり親世帯に有用な情報が当事者に届いていなかったり、頼れる親族がいなくて地域で孤立していたりする場合があります。地域母子会を通じての交流の場の創設、児童相談、関係機関と連携した生活安定化へのサポート、個々の実情に応じた地域ぐるみの支援体制など、ひとり親家庭の悩みや現状を正確に把握し対応するための相談体制の強化が必要です。

 

“わが幸はわが手で”をモットーに 北海道母子福祉センター

母子会を敬遠する若い世代

  北海道母子寡婦福祉連合会(以下、道母連)は、札幌市以外の全道13地区母連96単位会(地域母子会)と連携して、子どもの健やかな成長と母子家庭等と寡婦の福祉向上に取り組んでいます。札幌市については、昭和59年に道母連から分離独立した札幌市母子寡婦福祉連合会の管轄となります。北海道母子福祉センターは、一般の方も利用できる宿泊施設と食事処をそなえた道母連の活動拠点です。
  「『母子家庭の現状と課題』と申しても、いろんな課題がありすぎて…」と戸惑いながら答えてくれたのは業務総括の城恵子さんです。たとえば「母子家庭は貧困で外食もできないとか、学用品も買えないという報道がありますが、どの程度の外食ができないのか、ちょっと疑問に思うこともあります。その中身は昔ほど簡単ではないんです」といいます。
  「若いお母さんたちは母子会に入りたがらない人が増えています」ともいいます。群れたくないとか、同じ境遇でも年寄りばっかりだとか、働き方の変化もその原因だということです。

お母さんたちも意識改革を

現場報告等勉強会を開催
▲清掃事業部は月1回、現場報告等勉強会を開催。スキルアップしています。

  就労相談に来たお母さんに道母連の清掃部で働いてみませんかと勧めると、大抵の人はそのまま帰るといいます。「清掃の現場は汚いし大変。朝7時からですからね。生ぬるいというか、切実感がなさすぎますよね。お母さんたちの意識改革もしていただかないとと思うこともあります」。正規雇用になると児童扶養手当が減額されるから迷っているという人もいます。生活保護を受けることにも抵抗がない若いお母さんも多い。
  「扶養手当が少々減っても安定した収入があるほうがいいと思うんですけど、違うんですね、今の人たちは。就労先を選ぶとき一番は時間みたいですね。貸金よりも、土日は休めるか、残業はあるのかということのほうが大事なようです」。

奨学金給付と就労支援

お食事処ぼれん 内観
▲母子福祉センター1階の「お食事処ぼれん」
宿泊ぼれん 内観
▲2階の一部と3階は「宿泊ぼれん」

  お母さんたちの一番の心配事は、養育費や奨学金など、やはり子どものこと。道母連では、北海道新聞社会福祉振興基金・北洋銀行・北海道CGCさんからの寄付金と道母連の果実収入で高校生に奨学金を年額6万円給付しています。今年度は335名の高校生に給付しました。その他、道母連では自主事業で母子福祉センターの宿泊・貸室・食事処ぼれん、新千歳空港カフェテラスBoren、物資頒布、道委託事業で清掃事業、道立病院内保育所の保育士管理業務等を就労支援の一環として行っています。
  就労支援として「ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業」があります。前述の高等職業訓練促進給付金の支給を受けている方に、入学準備金50万円、就職準備金20万円を上限として貸付をしています。資格取得後、5年間業務に従事すると返還が免除されます。
  「昨年できた制度ですけど、問い合わせは多くあります。あくまで貸付金ですので『5年間働かないと返還しなければならないのよ』というと、『5年間もですか』と言って電話を切っちゃう方もいます。5年くらいすぐ過ぎると思うので、一人でも多くこの恩恵に属してほしいと思います」と城さんは言います。

父子家庭の支援も開始

  平成26年に父子家庭も支援の対象となったことから、最近では父子家庭の会員も増えてきています。母子家庭に比べて、父子家庭のほうが安定した収入が得やすいと思われていたことが、支援対象になるのが遅れた理由だと思われます。城さんは「お父さん方にも扶養手当や援助を受けるのはカッコ悪いという意識もあったんだと思います」といいます。しかし現実は、父子家庭の父親が仕事と家事や子育てを両立させようとすると、男性中心の企業社会ゆえの困難があります。残業、休日出勤、出張などを拒否すると、配置転換や賃金カット、失業の危機に直面することもあります。
  「むしろお父さんたちのほうが切実なのかもしれませんね」。帯広母子会では、10年ほど前から夜でも子どもを預かるという取り組みを独自にやっています。「そんな施設がもっと広がれば、お父さんも安心して働けるのかなと思います」。
  また、学習塾も道内各地域母子会で取り組まれ、旭川市母子会では、旭川教育大の学生ボランティアによる学習塾が大変好評で、月2回、常に30人くらいの子どもが集まります。

情報過多で情報が伝わらない

新千歳空港の「カフェテラスBoren」
▲リニューアルされた新千歳空港の「カフェテラスBoren」
一番人気のアイスクリーム
▲一番人気のアイスクリーム

  母子家庭の女子高生が直接相談に来たことがありました。「自分は意思表示が下手で、お母さんがなんでも決めてしまう。自分で洋服を買ったこともないと言うんです」。城さんは、お母さんとゆっくり話してみたら、と助言しました。子どもも親も時間がない、余裕がない。ひとり親だから自分がなんでもやってあげたい、という気負いもあるようです。
  「早め早めに親がしてしまうという気持ちはわかります。子どもの気持ちをどこで考えてあげられるかだと思います」。
  情報の貧困という問題もあります。「昔はいろんな制度を作ろうとして一生懸命だったんですけど、制度ができればできるほどわからない人が多くなる。ホームページを見ても道母連が何をやっているところかわからない。母子会ってなんですかという若い人も多いんです。情報がありすぎて、自分がどの制度を使ったらいいのかわからない。いまは情報過多で、情報がなかなか伝わらないという時代ですよね」。
  最後に、いま一番読者に伝えたいことはと聞くと、事務局長の中山楠緒美さんが「今年7月1日で新千歳空港のカフェテラスBorenが開店25周年なんです。イベントも企画していますので、ぜひ空港までお越しください」ということでした。

社会福祉法人 北海道母子寡婦福祉連合会

札幌市中央区北1条東8丁目 北海道母子福祉センター内
電話(011)261-0447 FAX(011)232-8095
北海道母子福祉センター 外観
昭和30年発足以来、厳しい環境の中で家計を支えながら、子どもの健やかな成長を念じつつ、懸命に養育に当たる母子家庭等の自立と福祉の向上のため、60年以上の長きにわたって地道でひたむきな活動を続けています。

沿 革

昭和30年3月
北海道母子福祉連合会結成
昭和37年2月
社団法人北海道母子福祉連合会認可
昭和40年8月
北海道母子福祉センター運営母体となる社会福祉法人北海道母子福祉協会設立。
昭和57年4月
母子及び寡婦福祉法制定に伴い北海道母子寡婦福祉連合会に名称変更
平成10年4月
社団法人北海道母子寡婦福祉連合会と社会福祉法人北海道母子福祉協会を統合して社会福祉法人北海道母子寡婦福祉連合会がスタート