福祉の現場から

いま求められてる職員の「働き方改革」福祉施設のワーク・ライフ・バランス

いま福祉職場では人材確保が大きな課題となっています。
優秀な人材の確保、離職率低下のための対策としてもワーク・ライフ・バランスを推進する施設が増えています。
札幌市のワーク・ライフ・バランス認証制度において「ステップ3」の認証を受けた(社福)芽生を訪ねワーク・ライフ・バランスの取り組みを取材しました。

ワーク・ライフ・バランスとは?

  最近、ワーク・ライフ・バランスという言葉をさまざまな場所で耳にします。内閣が働き方改革を推進するなか、日本人の働き方が見直されるようになってから特に注目されるようになりました。しかし、言葉が実態以上に先行して、本来の意味が十分に理解されていない部分があります。ワーク・ライフ・バランスは「仕事と生活の調和」と訳されます。これでは解釈もさまざまです。「仕事とプライベートの生活をはっきり分けること」と思っている人も少なくありません。仕事と生活は相反するものではありません。ワーク・ライフ・バランスとは「生活の充実によって仕事の効率・成果が上がる」←→「仕事の効率が上がれば私生活も潤う」といった相乗効果・好循環のことを意味します。働きやすい職場環境と、家事や育児、地域社会での充実した生活の両立があってこそワーク・ライフ・バランスといえます。

注目される少子高齢化対策

保育士さんの授乳タイム
▲保育士さんの授乳タイム
保育士さんの絵本の読み聞かせ
▲保育士さんの絵本の読み聞かせ

  ワーク・ライフ・バランスが重視される理由に「少子高齢化」があります。政府は2003年に『少子化対策基本法』『次世代育成支援対策推進法(次世代法)』を制定。企業に対して法の規定を上回る時短勤務・育児休業制度などを拡充するよう促しています。2007年には内閣府が行動指針を定め、有給休暇消化率100%、男性の育児休業取得率を10%に引き上げるなどの目標を掲げました。イクメンという言葉に代表されるように、男性の育児休暇取得促進は、女性の活躍という働き方改革の実現にもつながります。

  少子化と同様に深刻なのが高齢化問題です。あと数年後には、団塊の世代の介護対策が問題になってくることが予想されます。これは女性だけでなく、男性にも大きくかかわってくる問題です。親の介護が必要になった場合の介護休暇制度、休暇明けにキャリア・ダウンしない制度などが整備されていなければ、優秀な職員が定着しにくくなると思われます。
●少子化に対する出産・育児支援
●高齢化に対する働き方改革
の2点がワーク・ライフ・バランスが必要な大きな理由といえます。

優秀な人材の獲得・確保

  新卒・中途採用ともに売り手市場の傾向が強まっており、優秀な人材を獲得することが難しくなっています。ワーク・ライフ・バランスを推進することによって、「職員を大切にする職場」「働き方が柔軟な職場」というイメージをアピールでき、人材獲得に大きなプラスとなります。また、職員・職場全体のモチベーションにも好影響をあたえ、優秀な人材の定着、労働生産性の向上による人材育成・研修コストの回収などのメリットにもつながります。
  札幌市では、ワーク・ライフ・バランスを推進している企業を支援するため、ワーク・ライフ・バランス認証制度を実施しています。(1)所定外労働時間の削減(2)年次有給休暇取得の促進(3)キャリアや能力の開発支援(4)仕事と育児の両立支援(5)心身のヘルスケアなど、企業の取り組みに応じて右記のステップ1~3に認証されます。認証された企業は、アドバイザーの派遣(無料)や助成金の交付などの支援制度を利用できます。さらに、ハローワークの求人票に「ワーク・ライフ・バランス認証企業」と表示でき、優良企業であることをアピールできます。

札幌市ワーク・ライフ・バランス認証制度

ステップ1「取組推進宣言企業」の認証を受ける
下記の条件を満たすことで「取組推進宣言企業」として認証されます。
●札幌市内に事業所があること
●ワーク・ライフ・バランス取組宣言シートに具体的な取組内容を記載して申請する
●就業規則を労働基準監督署に届け出ていること
ステップ2「行動計画策定企業」の認証を受ける
 ステップ1に加えて、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、届け出ていること。
ステップ3「先進取組企業」の認証を受ける
 ステップ2に加えて、労働関係法令に基づく最低基準を上回る制度を規定していること。

 
 

職員の意欲を高める職場環境づくりひばりが丘あすなろ保育園

認証制度申請は制度づくりの一環

新設のひばりが丘あすなろ保育園
▲新設のひばりが丘あすなろ保育園

  今年4月に開設されたばかりの社会福祉法人芽生「ひばりが丘あすなろ保育園」を訪ね、山本廣子園長に話を聞きました。園舎は厚別区の住宅街の一画に位置します。山本園長は、当時は手稲区でNPO法人の活動をしていた瀧谷和隆理事長と知り合い、一緒に「ていねあすなろ保育園」を創設し、園長を務めてこられた方です。
  札幌市ワーク・ライフ・バランス認証制度に申請したのは労務管理士から、こんな制度があると教えられ、その必要性を認識し、申請しました。
  「申請したときに補助金が出たのは記憶にありますが、アドバイザーの派遣などの支援は受けたことはありません。制度を利用するというよりも、あくまで職員の待遇改善のための制度づくりの一環です。人材確保のためのアピールということは全然考えていませんでした」と山本園長は笑います。

職員は産後2ヵ月で職場復帰

保育士と理事をハンガリー研修に派遣
▲保育士と理事をハンガリー研修に派遣
自然活動体験を通じ環境保護の重要性を学びます
▲自然活動体験を通じ環境保護の重要性を学びます

  社会福祉法人芽生では、臨時職員にも正職員と同じ住宅手当を支給しています。また、産前・産後の8週間ずつの休暇期間にも給与が支給されます。職場復帰を希望する職員は子どもの保育園入所の手続きをすませ、2カ月から子どもと一緒に職場復帰して午前と午後、園内で授乳しています。
  「子どもを育てながらも、この仕事がしたいという意欲を持ってくれることを期待していました」。育児休暇期間は1年間あり、希望する職員は休暇期間を自由に選べます。「2カ月で復帰した職員の出勤時間は、1年間は9時出勤に固定し、早番・遅番はありません。病院に行くための休みや早退などの時間短縮勤務などにも配慮しています」。職員確保、特に保育士の確保が難しい状況の中で、職場に戻りやすい環境にあるというのは、職員にとってもうれしいことに違いありません。
  職員の研修制度にも予算を組んで対応しています。ハンガリーへの海外派遣も、山本園長を含め5人が派遣されています。ハンガリーでは、一人ひとりの子どもを担当制にして、個の発達をしっかり見据える大切さを学びました。「遊びの環境を充実させることで、子ども一人ひとりの発達に対応することができるようになり、子どもの主体性をどう引き出していけるのかを考え、その子に対してどのような環境を準備するのが望ましいのか、これからも勉強していかなければいけないと感じております。『子育て支援』と『子育ち支援』。子育てというと保護者の就労支援のみに誤解されやすいのですが、子どもが育つための支援を大切に考えております。子どもが明るく元気に育つ「あすなろう あすはなろう」と希望を抱くことから、あすなろ保育園と願いを込めました。
  行事についても、元気な〝からだ〟(スポーツフェスティバル)、ゆたかな〝こころ〟で人と人とのかかわりを(子どもフェスティバル)、そして、自然の中での遊びから多くの体験を広げ感じる〝えいち〟を表現する(アートフェスティバル)を開催。「子どもの成長を家族の皆さんに観ていただく事を実施したいと考えています」。
  一人ひとりの保育士自身も生き生きと仕事に向かう気持ちを抱き、子どもたちと生活をする楽しさを、また、子どもの成長を多方向からみつめ、どのように関わって行こうかとチームワークで話し合い、任された仕事が認められ、自己肯定感を持ち、意識が高まるように職員環境を大切にしていきたいと思っていると言います。

職員のほぼ全員が正職員

  今後改善していきたいことは何かありますかと聞くと「これ以上改善するには何をしたらよいのか今はまだ見つかっていません。うちの法人はほぼ全員が正職員です。子どもたちの環境づくりと職員に還元するということで責任を持って良い仕事ができる意識が高まると信じております」。

社会福祉法人 芽 生

札幌市手稲区曙5条3丁目2-25
電話(011) 691-2346 FAX(011) 691-2348

社会福祉法人 芽 生 外観
平成16年法人設立。平成17年ていねあすなろ保育園創設、平成25年分園開設、平成30年度から認定こども園に移行しました。今年4月には厚別区に新たに「ひばりが丘あすなろ保育園」を開園。チルドレン・ファーストをモットーに、〝遊び〟を中心に据えながら〝からだ〟と〝こころ〟と〝えいち〟を育てる保育を目指しています。保育園創設以来、手稲区の豊かな自然環境を通じて感受性豊かに育つよう、自然エネルギーを取り入れた「循環型環境教育体験」、食べる力を育み・食べる営みを形成する「食農体験」、園庭畑・ビオトープ・ソーラークッカー等の「自然体験活動」、仲間と遊ぶ楽しさを通じ創造力・仲間との規律を学ぶ「生活体験」などを取り入れています。この保育方針は新園にも受け継がれ、未来を担う子どもたちに夢を託しています。
ていねあすなろ認定こども園
【本園】乳幼児併設園 【分園】乳児棟
【新設】ひばりが丘あすなろ保育園