福祉の現場から

仕事・子育て両立支援新制度 企業主導型保育事業

企業が従業員のための保育施設設置を推進する新制度です。
保育の受け皿の拡大、待機児童問題の解消だけでなく従業員への福利厚生の一環としても
注目を集めています。
保育所の利用定員のうち、最大5割までを「地域枠」とし地域の人たちに公開することで
地域貢献にもつながります。
平成30年、札幌市西区に開園した西野あさひ保育園を訪ね企業主導型保育所について
取材しました。

企業主導型保育所とは

  2016年に内閣府は、企業主導型保育事業をスタートさせました。男女を問わず仕事と子育てを両立させ、働き方改革による多様な就労形態を実現するために、企業や保育事業実施者が設置する認可外保育施設が企業主導型保育所です。2018年1月31日時点で全国に2190施設、定員は5万91人分に達しました(公益財団法人・児童育成協会調べ)。
  事業導入の背景には待機児童問題があります。結婚から妊娠、出産、子育てまで切れ目のない支援を行うことで、少子化問題、待機児童問題を解決することがテーマとなっています。企業主導型保育所は「仕事・子育て両立支援事業」のうちの一つです。

事業の特徴と企業のメリット

●働き方に応じた保育サービス

  企業のイニシアティブで保育施設を設置・運営できるため、従業員の働き方に応じた保育サービスが展開できます。例えば、小売、飲食、公共交通機関など、夜間や休日に働く従業員が多い企業では、それに対応した保育施設を設置でき、一定の労働力確保が見込めます。また、非正規社員や短時間勤務の社員は、延長・夜間、土日の保育、短時間・週2日のみの利用など幅広い選択肢の中から選べるようになり、職員の離職率低下も期待できます。。

●複数企業で共同設置、共同利用

  いくら社員のためといっても、新たに保育所を開設することは楽なことではありません。一つの企業では負担が多いことも考えられるため、複数の企業が共同で設置・運営を可能にすることで、企業の導入ハードルを下げ、一企業のコストやリスクを分散できます。また、他企業と利用契約を交わして他社の従業員の子どもを受け入れる共同利用も可能です。

●地域の子どもも受け入れ可能

  自治体によって「保育の必要性が低い」と判断された場合は認可保育所に入所できませんが、企業主導型保育所の「従業員枠」では、自治体の認定を必要としません。ただし、就労証明書がない場合は、自治体からの支給認定証が必要です。また、企業主導型保育所では「従業員枠」のほかに、入所定員の50%以内の範囲で「地域枠」を任意で設定できます。地域枠は地域住民の子どもを受け入れるための枠です。利用料金も認可保育所と同水準で利用が可能です。待機児童問題に悩む地域住民の受け皿ともなり、地域貢献につながります。

●認可施設並みの助成を受給

  企業主導型保育所は認可保育所とは異なり、自治体の設置認可を必要としません。都道府県等に届け出た上で児童育成協会に助成申請を行うことになります。運営費・整備費については認可施設と同程度の助成が受けられ、各種加算もあります。

企業主導型保育所の課題

  企業にとってはメリットの多い制度ですが、人員配置などの基準が低く設定されていることで、保育の質の低下を懸念する声があります。むしろ認可保育所を増やすことに財源を使うべきなのではないのかという意見も根強くあります。
  また、この制度が従業員を体良く使うための口実になってしまう危険性も指摘されています。土日保育や24時間保育も運営可能であるため、多様な働き方に応じられるというメリットはあります。しかし、そもそも育児休暇・介護休暇をもっと取りやすくするべき、深夜業は免除されるべき、ということで「育児・介護休業法」が定められています。企業主導型保育事業は、これと逆行するもので、過度に早期復職を促してしまうことにならないか、という指摘もあります。そのようなマイナスイメージがありますが、これまで認可保育所を運営してきた社会福祉法人等が保育室の環境、保育内容、給食、健康管理・安全確保、保護者への情報提供などのノウハウを活かしてニーズに応えている取り組みも出ています。

(社会福祉法人)札幌清幸福祉会 西野あさひ保育園札幌市西区西野9条7丁目9-13

認可保育所の基準で運営

西野あさひ保育園外観
西野あさひ保育園外観
近くの公園で砂遊びを楽しむ子どもたち
近くの公園で砂遊びを楽しむ子どもたち

  (社福)札幌清幸福祉会が設置・運営する企業主導型保育所「西野あさひ保育園」は、利用定員12名の小さな保育園です。札幌市の郊外、西区西野の住宅街に位置する保育所を訪ね、中込ひろえ園長に話を聞きました。
  札幌清幸福祉会では、特別養護老人ホーム「五天山園」と医療法人社団清和会の要請を受けて西野あさひ保育園を開園しました。現在、従業員枠4名、地域枠6名で運営しています。基準により地域枠は定員が制限されています。
  「地域枠の定員を超えても入所可能という弾力措置という制度ができました」と中込園長。弾力措置とは、企業主導型保育事業費補助金実施要綱が一部改正され、『従業員枠に空き定員がある場合に、保育所等の入所保留の通知を受けた児童に限って、地域枠の上限を超えた受け入れが可能』という制度です。
  保育方針は、全部、認可保育所と同じ基準で運営するという理事長の強い意向があります。
  「人員配置基準は、有資格者は半数でいいことになっていますが、理事長の方針で100%保育士です。保育士は全員、認可保育所の経験がある保育士で、姉妹園の西野あおい保育園で働いていた保育士もいます」。
  園庭はありませんが、近くに園庭に見合うような公園があれば園庭代わりとして認められます。「園の近くには大小いくつもの公園がありますので問題はありません。ただ冬の時期は広い場所がありませんので、大きい子がたくさん遊べる環境作りを工夫したいと思っています」。

少人数で細やかな保育

園舎内で七夕の行事
園舎内で七夕の行事
西野あおい保育園と合同で「焼きいも会」。
西野あおい保育園と合同で「焼きいも会」。後ろは西野あおい保育園の園舎

  保育園の開所時間は7:00~20:00です。17:00、18:00までの保育所が多いなか、延長保育の必要がない13時間保育を実施しています。
  認可保育所と小規模保育所の違いはどんなことがあるのでしょうか。
  「子どもたちが少ないことで集団としての活動は制限されますが、それ以外は認可保育所と変わらない体制で運営できていると思います。また、小さな保育園だからこそ、子どもたちみんなを連れて遊びにも行けます」。小さな保育園だと子どもたち一人ひとりの個性や成長に合わせて細やかに接することができると中込園長は言います。
  「子どもたち、保護者、保育士の距離がそれぞれ近いので、毎日が懇談会、情報交換の場としてあり、特に小さな子どもたちに関しては安心して預けることができる環境にあると思います」。
  一方、大きな子どもたちに対しては心配もあります。
  「遊びの中で子ども同士で喧嘩をしたり、相手を思いやったり等、集団生活の中で覚えていくこともありますが、集団として小さ過ぎますので、小学校入学までにそういった経験をさせたいと思います」。
  そういう場合に同法人の認可保育所「西野あおい保育園」が近くにあります。大きい子を中心に行事に参加したり、広い園庭で一緒に遊んだりという交流ができます。職員が足りないときには「いつでも手伝いに行くよ」と言ってくれる保育士もいます。困ったときに法人内でお互いに助け合える施設があることが札幌清幸福祉会の強みとなっているようです。

保育士確保が重要課題

  西野は札幌の郊外に位置するということもあり、保育士の確保は難しい面があるといいます。認可外保育所よりも認可保育所で働きたいという保育士もいます。しかし、最近では認可外保育所で働きたいという保育士も増えているといいます。
  「特に若い人は、残業をしたくないとか、書類が多いのが嫌だとか、そういうことがあるみたいですね」。子どもが多ければ書類も多くなります。
  一人保育士が入れば預かれる子どもの数も増えます。自治体の保育認定を受けても、保育士が足りないために入所できない場合もあります。例えば1、2歳児の場合、保育士が一人増えれば6人の子どもを受け入れられます。保育士の確保は重要な課題となっています。
  保護者の中には認可保育所への信頼が根強くあり、認可外保育所を敬遠する傾向があります。認可外保育所といえども児童福祉法に基づき、都道府県等の指導・監督を受けること、必要に応じて国や児童育成協会による助言・指導に応じることが規定され、保育の質の確保が行われています。企業主導型保育所も認可保育所と変わらない運営ができているところもあることを、もっと広く知ってもらう必要があるのではないでしょうか。

社会福祉法人 札幌清幸福祉会

札幌市西区西野7条8丁目14-5
電話(011)667-5454

西野あおい保育園 外観
西野あおい保育園

 平成14年法人設立。平成15年に開園した認可保育所「西野あおい保育園」を主体に、平成29年に厚別区に企業主導型保育所「ウェルネットもりの保育園」を開園しました。平成30年には西区に企業主導型保育所「西野あさひ保育園」を開園。認可保育所の経験と実績をもとに高い水準で保育サービスを提供しています。

西野あおい保育園(認可保育所)
西野あさひ保育園(企業主導型保育所)
ウェルネットもりの保育園(企業主導型保育所)