福祉の現場から

障がい者を地域で支える有償ボランティア制度 地域ぬくもりサポート事業

障がいのある方や発達に心配のある児童の日常生活を地域全体で支えるため、
地域住民による有償ボランティア活動を推進する札幌市独自の事業です。
「専門的な知識はないけれど、ちょっとした手助けならできる」
「地域の方の笑顔のために自分の余暇時間を役立てたい」
そんな一人ひとりの思いを結び、大きな「地域の輪」ができています。

利用者とボランティアをマッチング

実技と障がい者理解の両面で行われる研修会
実技と障がい者理解の両面で行われる研修会

 地域ぬくもりサポート事業とは、資格はないけれどお手伝いしたいという地域サポーター(有償ボランティア)と、日常のちょっとした困りごとがある障がい児者をマッチングする札幌市の独自事業です。平成24年8月より札幌市中央区の一部でモデル事業としてスタートしました。平成27年からは札幌全市に拡大しています。札幌市から委託を受けている地域ぬくもりサポートセンター(以下、サポートセンター)が手助けを求める方と、誰かの役に立ちたいという想いを持った地域サポーターをつなぐ架け橋になります。両者がサポートセンターに登録して、活動できる場所や曜日が合う人を紹介するシステムです。地域サポーターは登録後、1時間程度の事前研修に参加していただきます。
 「ちょっとした話し相手になるとか、除雪や買い物のお手伝いだとか、障害福祉サービスの対象にはならないけれども、ニーズはあるということを有償ボランティアの形で札幌市がお手伝いできたら、いろんな方が幸せになれるんじゃないかということで、制度の隙間を埋められるような施策として事業を立ち上げました」と札幌市障がい福祉課の松村達哉さんは語ります。
 事業を中央区全域に拡大した平成25年度の登録者数は、利用希望者が50人、地域サポーター111人、1年間に253件の利用がありました。昨年度(平成30年度)は、利用者357人、地域サポーター384人、利用件数1217件と大幅に増えています。利用者と地域サポーターの継続的な交流に発展したケースもあり、地域コミュニティの活性化にも一役買っています。

信頼関係で成り立つワンコインボランティア

 支援内容は、障害福祉サービスの対象にならない分野で、専門的知識や介護技術を持っていなくてもできる日常生活のお手伝いが主体です。定期的でなくても大丈夫です。空いている時間に概ね1時間半程度の支援をしていただきます。ボランティアのハードルを下げたことで地域サポーターが参加しやすくなりました。主な支援内容は、 
●家事支援(掃除、調理、洗濯、買い物代行など)
●外出支援(学校、施設、職場への送り迎え、買い物の付き添いなど)
●育児支援(遊び相手、保育所や幼稚園の送り迎えなど)
●その他暮らしの支援(見守り、代筆、代読、大工仕事、雪かきなど)
具体的な支援内容・進め方については、顔合わせのときの話し合いにより決定します。
 1回の支援につき利用者から地域サポーターに、交通費等相当として500円が支払われます。このワンコインシステムにも意味があります。
 「無償ということになると、お願いする人も遠慮したり、気兼ねしてしまうということがあります。そんな心の負担を軽くすること。また、お手伝いするほうも交通費とかコピー代、ファックス代など細かい費用というのは発生します。そういった部分に当ててもらえれば気持ちよくお手伝いしてもらえるんじゃないかと思います。500円というのは「報酬」として定めてはいますが、労働対価ではなくて、利用者さんからの謝礼の気持ちということです」。有償であっても地域ぬくもりサポート事業は、あくまでも誰かの役に立ちたいという地域サポーターの自発的な意思によるボランティア活動だと松村さんは言います。
 「このサポート事業の裾野が広がって、なくてはならない制度だと認知されるようになれば、サポートセンターを増やしていけるかもしれません。今後とも、より多くのサポーターの方にご登録いただき、また、利用者の皆様に活用を促していくためには、積極的な広報活動が大事だと考えています」ということです。

社会福祉法人あむ 地域ぬくもりサポートセンター

マッチングの難しさ

目の不自由な方の外出のお手伝い
目の不自由な方の外出のお手伝い
世代を超えた交流の場「みんなカフェ」のそば打ち体験
お母さんが視覚障がいのお子さんの外出の付き添い。
お子さんに障がいがなくても家族に障がいがあれば対象になります。
そこがヘルパーサービスとの違い

 札幌市中央区の市街地に位置する社会福祉法人「あむ」は、札幌市からの委託を受けて地域ぬくもりサポートセンターを運営しています。事業開始当初からサポートセンターのコーディネーターを務める姉帯哲征さん(社会福祉士)を訪ねました。
 『あむ』では、「出会いからつながりを編み、結び目を作る」を法人理念に掲げ、近所付き合いできるワンマイル(約1.6km)の範囲を対象にしたネットワークを大切にして地域に根ざした障がい者支援「ワンマイルネット事業」に取り組んでいます。その実績に着目した札幌市から依頼があったとき姉帯さんは「法人として、まさにうちがやるべき事業だと思いました」と言います。
 障害福祉サービスにもヘルパーという形で家事や外出の支援はありますが、それだけでは足りない方もいますし、ヘルパーの対象にならない方もいます。例えば、心の病がある方で家族と同居している方はヘルパーの対象になりません。しかし実際には、困っている方がいます。そんなときに、この活動はボランティアですので、両者の合意があればどんなお手伝いでもできます。うまくマッチングできれば、使い勝手がいい事業です。
 利用者のニーズに対して、地域サポーターの数は足りているのでしょうか。
 「これが難しくて。利用者さんには様々なニーズがあります。一方、ボランティアにも人のために役に立ちたいという思いがあります。しかし、地域サポーターの数は増えたとしても、全員が当初の熱意を持ち続けているわけではありません。熱意が薄れて、登録はしているけれども幽霊登録者となっている方がいるのも実状です。そんなミスマッチがあって、一概に登録者の数では計れません。サポーターの登録時に条件や希望は聞きますが、必ずしも条件が合うからうまくいくとは限りません。利用者さんとサポーターの相性が一番大事です」と姉帯さん。相性が良くて、やりがいや喜びを感じて活動してくださるサポーターと利用者さんは継続的な関係になることが多いといいます。

人と人をつなぐ面白さ

理学療法士を目指す学生ボランティア。
理学療法士を目指す学生ボランティア。
二人で来ても支払いは1回分の500円のみ

 「この活動は、やりがいもありますし、面白いですよ」という姉帯さん。心温まるエピソードは枚挙にいとまがありません。マッチングしてみたら、二人は何十年ぶりに再会した友だち同士だったこともありました。結局、事業に関係なく二人の間で話が進んでいきました。
 「私たちもいろいろ考えてマッチングするわけですけど、きれいに嵌まったときには『やったぜ』という気持になります。そういった例がいくつもあって、もちろんうまくいかないことも多いんですが、人と人の縁をつなぐ仕事として面白さを感じます」。
 利用者さんとサポーターが親しくなり、一緒にコンサートに行ったり、食事したり、ご近所付き合いに発展して、サポートセンターを通さず、500円の授受もないというケースもあります。
 「それを否定するつもりはありません。そこはプライベートな世界ですので、私たちが関与する部分ではありません。そんな風に両者の関係が良くなっていけばいいんじゃないかと思います」。ただし、サポートセンターを通さない活動であれば、事故やトラブルが起こった場合、札幌市が加入する保険の対象にはなりません。サポート事業の一環として活動するのであれば、サポートセンターを通してルールに則って活動してもらうことが原則です。

小さな支援、大きな喜び

発達障がいのある男の子の遊び相手をするボランティア
発達障がいのある男の子の遊び相手をするボランティア

 課題としては、活動地域による利用件数の偏在が大きいことです。『あむ』の担当区域でいえば、中央区が突出して多く、昨年度は497件。一方、南区は2件、清田区は0件でした。理由としては、中央区だと地下鉄で行き来できますが、郊外だと交通手段が不便なこと。また、南区、清田区はサポーターが少なく、活動エリアが広いため近隣に利用者、サポーターが居住していることが少なくマッチングが難しいことが挙げられます。
 「本来なら各区にサポートセンターがあるのが理想ですが、市の予算の関係もありますから、私の方では何とも言えません。数字だけで判断できるものではありませんが、もっと実績を積み重ねないと先細りになりかねません」。
 事業は右肩上がりに大きくなってきましたが、近年は横ばい状態です。一人でも多くの利用者からの依頼に応えられるようサポーターを増やす必要がありますが、これといった解決策はなくて、地道なPR活動を続けていくしかないといいます。
 この事業は札幌市の独自事業ですが、それぞれの地域の福祉施設が独自に社会貢献事業として取り組むことも可能かもしれません。「小さな支援」であっても「大きな喜び」の輪が広がる事業です。こんな支援の仕組みが全国に広がればいいなと思いました。

社会福祉法人 あむ

札幌市中央区南9条西13丁目1-40
TEL(011)206-6511 FAX(011)206-6229

「あむ」の地域ぬくもりサポートセンター 外観
「あむ」の地域ぬくもりサポートセンター

 平成11年、社会福祉法人札幌この実会の一事業として発足。定員10名の小さな通所施設と、制度にはない個人の要望に添ったオーダーメイドのパーソナルサービス(有料)からのスタートでした。その後、新しい事業を少しずつ展開し、障がいが理由になった〝あきらめ〟や〝しかたない〟をひとつでも減らすための手伝いをしています。札幌この実会では、顔の見える福祉の創造をめざし、法人事業を幾つかに分離させ、それぞれが地域の中で自立的に活動していくことを決めていました。『社会福祉法人あむ』は平成 21年4月、計画通り分離独立して新しい法人となりました。『あむ』という名称には、つながりを編み、結び目を作りたいとの願いが込められています。
居宅介護等事業ばでぃ
児童発達支援事業に・こ・ぱ
生活介護事業びーと
相談支援事業相談室ぽぽ
相談支援事業相談室にっと
一体型ケアホームこまち
さっぽろ地域づくりネットワーク ワン・オール