小さな旅

二人の横綱を生んだ海峡のまち 初夏のふくしま町の旅

二大横綱の偉業を讃える記念館 世界最大の海底トンネル 今夏から秘境クルーズも運航開始 新たな魅力を加えた海峡のまち 渡島半島南端の福島町を訪ねた

岩部海岸の青の洞窟(左/写真提供:福島町まちづくり工房)と横綱千代の山・千代の富士記念館

町のいたるところで「横綱の里」をアピール

 北海道の南西部に位置し、津軽海峡に面した町。全国でも例のない二人の横綱を輩出した町であり、青函トンネルの北海道側の基地を担った町を見てみたい。旅ごころをくすぐる福島町を訪ねた。
 まず訪ねたのは、町の最大の自慢である横綱千代の山・千代の富士記念館だ。町の中心部に相撲やぐらが立ち、力士の名を書いた幟がはためく記念館前に二横綱の銅像がある。第41代横綱千代の山と第58代横綱千代の富士の全記録と大相撲文化の資料が収められている記念館だ。優勝賜杯や千代の富士が断髪した時の大銀杏、国民栄誉賞を受賞した千代の富士の賞状など普段目にすることのできない貴重なものばかり。両横綱の昇進に合わせて、当時の取組の映像も見られる。北の湖対千代の富士の世紀の優勝決定戦、引退の引き金となった貴乃花(当時は貴花田)戦など懐かしい映像の数々に思わず見入ってしまった。千代の山の貴重なモノクロ映像も残っている。
 館内には九重部屋の稽古場を再現した土俵があり、毎年訪れる九重部屋の夏合宿では、朝稽古も見学できるとあって相撲ファンには見逃せない。両横綱の手形と自分の手形を重ねた記念手形(1回100円)が作れるサービスもあった。
 記念館に隣接して道の駅「横綱の里ふくしま」がある。小さな道の駅だが特産品センターには、新鮮な海産物がズラリと並ぶ。特に日本一の生産量を誇るスルメやイカの塩辛、昆布などは種類も豊富に揃っている。
 道の駅の裏側は横綱街道と名付けられた商店街。綱や軍配をモチーフにした街灯が立ち、道路中央に実物大の土俵が描かれ、相撲の聖地らしいたたずまいだ。

千代の富士の大銀杏
千代の富士の大銀杏
実際に使用された綱や化粧廻し、国民栄誉賞の賞状
実際に使用された綱や化粧廻し、国民栄誉賞の賞状
九重部屋の稽古場を再現した土俵には大型スクリーンも備えられている
九重部屋の稽古場を再現した土俵には大型スクリーンも備えられている
相撲幟がはためく道の駅「横綱の里ふくしま」
相撲幟がはためく道の駅「横綱の里ふくしま」
相撲街道と呼ばれる商店街の街灯
相撲街道と呼ばれる商店街の街灯
土俵が描かれた石畳
土俵が描かれた石畳

もう1つの福島町自慢 青函トンネル記念館

 トンネル技術の粋を結集して完成した世界最大の海底トンネル、青函トンネル記念館は、2つの坑道をイメージしたユニークな外観。エントランスに巨大な掘削機が展示されていて驚かされる。
 世紀の難工事といわれる工事記録や技術情報、設備重機などが遺産として受け継がれている。困難を極めた工事の様子やトンネルの仕組みなどが映像とジオラマで再現されている。観光客が塗り絵をした新幹線の絵が走り出すモニターもあり、子どもたちに人気だとか。
 住宅地の丘の上にある福島大神宮は、檜と杉の巨木に囲まれ、市街地にあるとは思えない静謐さの中にある。拝殿の前にそびえる注連縄を張った杉は、周囲約580㎝ 樹高23m 樹齢約370年の北海道で2番目に大きいという御神木。落雷で砕けた杉が根元から八つの幹になって甦ったという八鉾杉(やつほこすぎ)だ。
 同じ境内にある川濯(かわそ)神社には、根元にこぶがある乳房檜(ちぶさひのき)と呼ばれる名木がある。女性が参拝すると産後の乳の出がよくなるといわれ、母体安全、子孫繁栄などの御神木として大切にされている。
 境内に毎年母の日に開催される「女だけの相撲大会」の会場となる土俵がある。土俵の前に、恐ろしい形相で大岩を持ち上げる天手力男命(あめのたぢからおのみこと)の像が立っている。天照大御神が天の岩戸に隠れたときに岩戸をこじ開けたといわれる怪力無双の神だ。相撲の元祖となった神様だそうだ。

青函トンネル記念館 外観
青函トンネル記念館 内観
年間2万人以上が来館する青函トンネル記念館
福島大神宮の鳥居の右にそびえる伝説を秘めた御神木・八鉾杉
福島大神宮の鳥居の右にそびえる伝説を秘めた御神木・八鉾杉
「女だけの相撲大会」会場となる土俵
相撲の決まり手を描いたレリーフが飾られた「女だけの相撲大会」会場となる土俵
川濯神社の御神木乳房檜
川濯神社の御神木乳房檜

福島名物「ちゃんこ鍋」と秘境をめぐる岩部クルーズ

 昼食は福島町名物の「ちゃんこ鍋」を食べないわけにはいかない。レストランたかおは、夏合宿に訪れる九重部屋の力士から教わったという直伝のちゃんこ鍋だ。鍋だけでも鶏肉に肉団子、豆腐、うどん、野菜など具だくさんで食べきれないほど。これに天ぷら、刺身、ポテトサラダが付いてボリューム満点だ。
 市街地から南に下ったところにあるチロップ館は廃校となった白符小学校の校舎を利用した観光施設。昔懐かしいレトロなおもちゃや人形、生活用具などの骨董品が所狭しと展示されている。貴重な資料も多く目を惹くものばかりだ。館長が集めたものや町民からの寄贈品だとか。親子で訪れる人も多く、子どもよりもお父さん、お母さんの方が夢中になるという。
 吉岡地区にある温泉保養センターゆとらぎ館の前を1.5kmほど進むと、古い社が鎮座している。境内に三十三体の観音像が並ぶ中、中央に火焔を背負った不動明王の像がある。この大滝のお不動様は、村に火災や地震がある場合、霊夢によって人々に知らせたといわれる。神社の奥を進むと吉岡不動滝があり、大滝の水は眼病に効くといわれ「目薬水」と呼ばれて多くの参拝者が訪れるとか。
 最後は新しい観光資源として注目されている岩部クルーズだ。市街地から東へ道道532号線の行き止まり、岩部漁港へ向かう。今年5月に完成したばかりの小型船に乗って岩部漁港から矢越岬まで片道約5kmの岩部海岸をめぐる90分のクルージング。船でしか行けない秘境だ。耳岩・シタン島・タタミ岩などの奇岩怪石や海から200mそそり立つ断崖など迫力満点。幻想的な青の洞窟に入ったり、海中の景観が楽しめるのも小型グラスボートならではの楽しみ。航路の各ポイントでガイドさんが語る歴史や、隠し財宝伝説、義経伝説の名調子も魅力の一つ。ドローンを使った上空からの記念撮影のサービスもある。
 福島町は小さな町ながら、見どころの多い魅力的な町だった。

九重部屋直伝のちゃんこ鍋ランチはボリューム満点
九重部屋直伝のちゃんこ鍋ランチはボリューム満点
岩部クルーズの注意事項を聞く
岩部クルーズの注意事項を聞く
チロップ館の熊谷正春館長の案内
チロップ館の熊谷正春館長の案内で骨董品の数々を見てまわる
福士船長(右)とガイド役の平野松寿さん(運航管理者)
福士船長(右)とガイド役の平野松寿さん(運航管理者)
生活用具などの骨董品が所狭しと展示されている
耳岩、タタミ岩をバックに上空からドローン撮影
耳岩、タタミ岩をバックに上空からドローン撮影

福島町の旅マップ

福島町の旅マップ