福祉の現場から
vol.133
社会福祉協議会の取り組み

社会福祉協議会は、幅広い福祉活動に取り組んでいるにもかかわらず、どんな組織で、何を行っているのか知らないという方も多いのではないでしょうか。
活動の種類、具体的な取り組み、そこから生まれる効果など、社会福祉協議会のあり方や役割への理解を深めるため、当広報紙の感想や意見をいつもはがきで寄せてくれるご縁もあって「東神楽町社会福祉協議会」に取材をお願いしました。
設立から70余年 地域福祉を支える民間組織
「社協」の略称で知られる社会福祉協議会は、1951年、「社会福祉事業法(現在の社会福祉法)」に基づいて設立された社会福祉法人です。「全国社会福祉協議会」「都道府県・指定都市社会福祉協議会」「市区町村社会福祉協議会」で構成され、全国約1900ヵ所に独立した組織を擁しています。その名称から行政機関の一つと思われがちですが、営利を目的としない民間の団体です。
社協の役割は、さまざまな福祉活動を通じて、地域福祉の推進を図ること。福祉といっても、児童福祉、老人福祉、障がい者福祉、母子福祉ほか、その範囲は幅広く、提供するサービスも福祉分野によって変わってきます。社協の認知度がそれほど高くないのは、活動内容が複雑多岐にわたっている点も理由の一つといえるかもしれません。
地域ニーズに応じて各種福祉活動を展開
社協では大きく分けて次の5つの事業・活動に取り組んでいます。
●住民参加による地域福祉活動、地域づくりの推進
・交流の場や居場所づくり
(ふれあい・生き生きサロン等)
・見守り活動
・住民主体の生活支援サービス
(住民同士の支え合い等)
・当事者組織の立ち上げ・支援
(同じような経験・境遇を持つ人たちによる組織づくり)
・地域福祉を推進する住民組織の支援ほか
●相談支援、権利擁護
・福祉総合相談・専門相談
・生活福祉資金貸付事業
・日常生活自立支援事業
・権利擁護センター、法人後見
・生活困窮者自立支援ほか
●介護・生活支援サービス
・居宅介護、訪問介護、通所介護、訪問入浴介護など各種介護支援
●ボランティア・市民活動センター
・ボランティアに関する相談やマッチング
・ボランティア養成
・ボランティアグループやNPO支援ほか
●災害対応、被災地・被災者支援
・災害ボランティアセンター
・生活支援相談員(個別訪問による見守り等)
前述したように社協は独立した組織です。そのため、すべての社協が同じ事業や活動を行っているわけではありません。また、同じ福祉分野でも、活動内容は社協によって異なります。最大の特徴は、地域特性や地域ニーズに応じた取り組みに力を入れていること。社協の事業や活動には、地域の特色や傾向が色濃く反映されています。

住民の交流等を支援「地域福祉活動」
旭川に隣接する東神楽町の社会福祉協議会に勤務する総務福祉課福祉係主任の江川和佳奈さん、福祉係の岡本里彩さんに、同社協が実施している活動についてうかがいました。
「他の地域同様、当社協でも高齢者を対象とした地域支援の割合が高くなっています。1994年にスタートした『ふれあい昼食会』は、70歳以上の一人暮らしの高齢者を対象に、年5回実施しています」と、江川さん。
コロナ禍以前は毎回、高齢者約50名、ボランティア約20名、計約70名が参加。現在は人数を制限するなど、密にならないよう工夫して行っているそうです。「家にこもりがちな高齢者の方にふれあいの機会を提供することが本来の目的ですが、参加した方々の健康状態などを知ることができ、見守り活動として機能していることに加え、情報収集の場にもなっています」。江川さんが言うように、その成果は一つではありません。
支え合う地域づくり「ボランティア活動」
同社協ではボランティアセンターを有し、そこを拠点に活動しています。住民同士による支え合い活動の一つに位置づけられている『できることから〝ささえ隊〞』は、電球の取り替え、ゴミ出しなど、身のまわりの困りごとを解決する有償ボランティアサービス事業です。同事業では〝ささえ隊〞への登録を呼びかけているほか、ボランティアの養成も行っています。一方、東神楽町では、1989年から始まった大規模宅地開発により、以前は5700人だった人口が子育て世帯を中心に約1万人まで増加。東神楽町は子どもの多い町ということもあってか、児童生徒のボランティア活動普及事業をはじめ、特別支援を必要とする児童と学生ボランティアによる交流会など、子どもを対象とした活動が盛んです。各家庭で用意したプレゼントをサンタに扮したボランティアが、クリスマスの時期に子どもたちに届ける『サンタがおうちにやってクル〜!』事業も好評を博しています。
2022 年には、近年需要が高まっている災害ボランティアの研修を開始しました。「災害発生時に、視覚に障がいのある方や介護を受けている方など、一人で避難できない住民をだれがサポートするのか。研修は、住民一人ひとりの災害意識を高めるために、役場と連携して進めています」。


介護する側、される側へ「介護・生活支援サービス」
高齢化が進む中、社協にとって欠かせないのが介護・生活支援サービス事業です。同社協では、東神楽町からの指定管理者制度により特別養護老人ホーム、デイサービスを運営しています。そのメリットを尋ねると、「介護が必要な方の情報を得た際、ケアマネジャーなど、介護の専門職員に速やかにつなぐことができ、スムーズに介護サービス等を利用できることです」と、江川さん。ただ、介護保険を利用したサービスを提供するだけでなく、介護支援が必要でなくとも、見守りや支援が必要な高齢者に対するサポートも社協の重要な役目。
「コロナ禍で3年ほど顔を見ていない高齢者も少なくありません。それもあって『お元気ですか訪問活動』と題して、昨年末から高齢者を対象とした見守り活動を始めました」。
また、在宅介護者を対象とした心身のリフレッシュを図る会など、介護する側への支援も実施しています。こうした取り組みも社協の特徴的な事業です。
既成概念にとらわれない地域に根ざした活動
日常生活自立支援や成年後見人制度などに関する事業も社協が担っています。認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者など、判断能力が不十分な人でも地域で自立した生活が送れるよう、金銭管理などのサービスを提供します。成年後見人の育成・支援や社協が法人後見となり、保護や財産管理を行うのも事業の一環です。
社協が抱える問題は、少子高齢化、人口減少などにより、「支え合い」の基盤が希薄になり、思うような活動ができなくなりつつあること。東神楽町でも、宅地開発で子育て世帯は増えたものの、社協の認知度が低く、つながりを持つことが難しいのが実情です。社協の活動に欠かせないボランティアの高齢化が進んでいることもあって、若い住民をいかに取り込むかが、社協共通の課題となっています。
「大学の実習で初めて社協のことを知りました」と話す岡本さんは、「自分と同じ20代の人たちに社協の活動を広めるためにも、SNSなどのツールを積極的に活用していきたい」と、社協の認知度を高めるためのアイディアを提案してくれました。
「子どものころに経験した活動が実は社協によるものだったことを大人になってから知り、活動の幅広さを実感しました」と、岡本さん。その言葉から、既存の福祉サービスにとられることのない、住民に寄り添った活動を追求する社協の姿勢が伝わってきました。

社会福祉法人 東神楽町社会福祉協議会
上川郡東神楽町南2条東1丁目4-1
TEL 0166-83-5424 FAX 0166-83-5522
1975年9月30日に設立。「在宅福祉活動」「地域福祉活動」「ボランティア活動」「介護保険等サービス事業」を柱に、地域に根ざした活動を展開しています。東神楽町からの指定管理者制度により「特別養護老人ホーム アゼリアハイツ」等を運営。通所介護、居宅介護支援、訪問介護など、充実の介護体制を築いているのが特徴です。2023年度には、事務所が東神楽町の新庁舎へ移転することが決まっており、移転後は新体制のもと東神楽町との連携を深め、よりきめ細かな福祉サービスの提供に努めていきます。

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