小さなたび
vol.-135
癒しと感動の景色、グルメを見つける。初夏のとうべつ町の旅

湖に映り込む森と空が美しいふくろう湖のたたずまい
国内最大級の自然公園とふくろう湖、当別ダム
札幌から約40分、石狩川を渡ると風景が変わった。広がる田園と澄んだ高い空がどこまでも続いている。日本海に近く、南北に長く伸びている当別町は、冬は雪が多いが夏は好天が多い。北海道の日本海側ではよくある気候だという。
今回の旅は、当別町が北端に抱える道民の森から始めることにした。約12,000haもの広大な手つかずの森が広がる国内最大級の自然公園だ。「森に集う・森に学ぶ・森に遊ぶ」をテーマにレクリエーション、スポーツ、文化活動、森づくりなど、森林とのふれあいを楽しめる。
いくつかの地区がある中で、神居尻地区に行ってみた。森林学習センター、コテージ、キャンプ場、焼肉広場など充実した施設や環境が揃っている。鳥のさえずりは聞こえるが、平日なので静かだなと思っていたら、ほどなく大型バスが到着した。若者たちが次々と降りてきて、周辺が一気に騒がしくなる。居合わせた管理人さんに聞いてみると、キャンプ場を予約しているインターナショナルスクールの団体さんですよと教えてくれた。
「ふくろう街道」とも呼ばれる道道28号線を南下すると、ふくろう湖の豊かな湖水が見えてきた。ふくろうは、当別の町鳥だ。針葉樹林などの深い緑に囲まれた風景は、北欧のようだと讃えられている。2012年、当別ダムの完成によってできた人造湖だ。放水時の眺めが見応えあるというので、下流広場に行ってみた。雪解け時は轟音が響くそうだが、この日も水しぶきをあげながら気持ちの良い音が聞こえていた。
当別町は亜麻の産地だ。広場の一角にも、うす紫色の花が可憐に咲いていたが、開花時間が短く、日の出とともに開き昼には散ってしまうらしい。
旧弁華別小学校は、1937年に建てられた現存する北海道最古の2階建て木造校舎だ。開拓時代からの歴史を感じるノスタルジックな建物で、自動車メーカーのCMにも登場したが、残念ながら2016年に閉校した。



開拓の歴史に触れる当別伊達記念館
当別は旧仙台藩岩出山の領主・伊達邦直によって開拓の歴史が築かれた地域だ。そのゆかりの文化財を保存・展示した当別伊達記念館に足を運んだ。京都の公家・冷泉家入嫁時に持参した打掛・振袖や1700年代初頭の源氏かるたなどのほか、貴重な史料も収集され、開拓史に触れることができる。伊達邸別館は、会議や来賓の接待・宿泊などのために建てられたという。狭くて傾斜のきつい階段をあがると、邦直と奥方の元へ重臣が開拓の報告をしている様子が人形により再現されていた。事前に申し込めば歴史研究専門員による対応も可能だ。
美味しいパン屋さんがあると聞き「ノルトエッセン」へ向かった。自家製天然酵母と無添加のパンが人気の店だ。周辺に民家がない静かな場所にある。こんなところでパンが売れるのかなと心配になったが、札幌に店があったころからのお客さんもいるし、全道から買いに来てくれるとか。しかもネット販売もしており、年配のご夫婦でやっている店は繁盛しているようだ。何がおすすめかと聞くと、こちらの好みを聞いたうえで食パンとバゲットを選んでくれた。
「家具工房旅する木」は、廃校になった小学校の校舎が工房だ。木のぬくもりを感じるオーダーメイドの家具を作っている。椅子やテーブルからキッチンなど、一生使えるこだわりの家具だ。教室を使用したショールームには、木の車椅子など、さまざまな作品が展示されている。見学は自由なので、眺めるだけでも心が温かくなる場所だ。帰ろうとすると、玄関そばの施錠された教室の中から犬に激しく吠えられた。何かご機嫌を損ねただろうか。





スウェーデンの文化を楽しむ交流センター
スウェーデンヒルズは、小高い丘の上の住宅地となっている。三角屋根とえんじ色の外壁で統一された家が並んだ美しい街並みだ。家と家の間には塀や境界がなく、芝生が広がっている。電柱がなく道路も広い。
スウェーデン交流センターは、文字どおり日本との友交親善を図り、北海道の産業や文化の発展にも寄与することを目的に設立されたもの。センターホール、ガラス工芸工房、木材工芸工房の3つの建物がある。センターホールでは、スウェーデン各都市の紹介や、木彫りの馬「ダーラナホース」、吹きガラスに代表される伝統工芸品の展示販売や図書コーナーもある。気軽に北欧文化に触れてみるのはどうだろう。
丘の上から広大な石狩平野を一望できるレクサンド記念公園には、姉妹都市レクサンド市から寄贈された大きなダーラナホースが設置されている。ベンチに座って眺望を楽しむこともできる。 昼食は〝当別とんかつ〞の看板にひかれて「お食事処 田んだん(だんだん)」にした。浅野牧場が生産する当別町のブランド豚「スマイルポーク」が食べられる。一番人気の「とんかつスタミナ定食」を注文すると、熱々じゅうじゅうのプレートに、野菜炒めの上にドンとのったとんかつが運ばれてきた。
野菜炒めにちゃんと味付けされているのだが、別に卵がついてくるので、お好みでとんかつに、かけたりつけたり、プレートが熱いうちにのせて半熟になったところをカツにからめて食べたりと、いろいろ楽しめる。肉は柔らかく、噛むと旨味と甘味がまじわり、にんにく醤油のソースとの相性も抜群だ。



”おいしい” がたくさんある道の駅とロイズの直売店
国道337号線の札幌大橋近くの「北欧の風 道の駅とうべつ」へ向かった。北欧風のベンガラ色に大きな三角屋根の可愛らしい外観が特徴で、内装にも木の温もりを感じるつくりだ。地元特産品はもちろん、オリジナルのパンや厳選されたスイーツコーナーなどが充実している。
町内の食材をふんだんに使った絶品料理を提供するレストラン「カフェ・テルツィーナ」、スウェーデンヒルズの人気店「レストランAri」によるテイクアウトコーナーなど、たくさんの “おいしい” が詰まった道の駅だ。農産物直売所も併設されている。
また、レクサンド市との交流で、ものづくり体験や食のイベントも企画している。
旅の最後に訪れたのは、田園風景に囲まれた自然の中にある「ロイズふと美工場直売店」だ。
ベーカリーでは、北海道の素材にこだわったパンや、カカオやチョコレートを使ったパンなど、ここだけの限定のパンがたくさん並ぶほか、オリジナル商品も豊富に揃っている。工場併設の施設「ロイズカカオ&チョコレートタウン」は、カカオの栽培からチョコレートができるまでの旅を、さまざまな体験を通して楽しめる。店舗前にはローズガーデンがあるが、この日までにはまだ薔薇は咲いていなくて、ちょっとだけ残念な気持ちで旅を締めくくった。


とうべつ町の旅マップ

当別町の主な福祉法人


社会福祉法人 当別町社会福祉協議会
石狩郡当別町西町32-2
当別町総合保健福祉センター「ゆとろ」内
電話(0133)22 – 2301 FAX(0133)22 – 0001
昭和58年(1983年)4月法人認可されました。平成24年に「見守り安心センター」を創設。新聞販売所や水道、ガス事業者など約50の一般事業者さんの協力のもと、高齢者等が孤立死することのないように、異変を感じたらすぐに社協に連絡するというネットワーク体制をとっています。平成18年に始まった「福祉まつり」には、福祉関係者の他に企業や行政職員、北海道医療大学の学生ボランティアが実行委員として企画・運営に携わってくれています。当別町は小学校から大学まである町として、毎年学生ボランティアが約100名参加して、9月に盛大に開催されます。
町の特性を生かして、地域で支え、助け合い、だれもが安心できる地域づくりに取り組んでいます。
