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小さなたび

vol.136

開拓の礎となった囚人労役と坂本龍馬ゆかりの地初秋の月形・浦臼の旅

(左)キャンプ場やサイクリングロードが整備された皆楽公園 (右)たわわに実った鶴沼ワイナリーの畑のブドウ

自然に恵まれた月形町の公園を巡る

初秋の晴れた日、国道275号線を札幌から月形へ向かって車で走った。JR札沼線の北海道医療大学駅よりも先の線路が3年前に無くなってしまったので、ドライブがちょっと寂しい。
はじめに立ち寄ったのは月ヶ湖自然公園だ。野鳥保護のため入り江は5月から8月は立入禁止なので、一般的な観光地ではないが、好奇心に誘われこの季節に訪れた。大沼と小沼とそれをとりまく湿原や森林など豊かな自然が残されている。駐車場に車を停め大沼のほとりまで出ると、誰もいない静かな湖面が広がっており、野鳥の囀りが聞こえた。
車で数キロ離れた皆楽公園は、対照的に広大な敷地にキャンプ場やバーベキューコーナーがあり、水と緑が調和した広場となっている。平日のこの日は人影は少なかったが、木漏れ日の中、散策している地元のご夫婦や年配の方がいた。近くには、とれたて野菜や特産品を販売している「水辺の家」や「月形温泉」もある。

静かな湖面が広がる月ヶ湖自然公園
大きな赤い三角屋根が目印の水辺の家

町の歴史を伝える監獄がテーマの博物館

旧JR線月形駅の方向へ向かうと、月形樺戸博物館の門が見えてくる。きれいに整備された建物周辺から入口に足を踏み入れると、いきなり足元が揺らいだ。足に鉄丸と鎖をつけた囚人の出入りですり減ったと言われる石段だ。石は札幌軟石である。博物館は、明治14年に設置された「樺戸集治監」が大正8年に閉鎖されるまでの、明治から大正にかけての歩みを歴史資料で展示再現している。集治監とは囚人を収容する施設だが、多くは士族の乱や自由民権運動に関わる政治犯だったという。
旧樺戸集治監本庁舎では、典獄(現在の刑務所長)室などが再現され、建設された当時の時代背景や集治監の様子が、パネルや映像と模型で紹介されていた。醤油の醸造所や煉瓦工場などもあった敷地内の建物がジオラマで展示されており、100年以上前のイメージが膨らむ。気のせいか足元に鉄丸を引きずっているような重い感覚になる。
札幌刑務所で実際に使われていた雑居房と独居房も再現されている。中を覗くと、寒そうな寝具や粗末な掃除用具、小さな囲いで隠した便所などがあるきりの狭い房だった。
一斉開房装置(非常時や災害時、20房の扉が一斉に開く)は、樺戸集治監で考案されたとされ、人気コミック『ゴールデンカムイ』にもモデルとして登場している。
本庁舎と地下廊下でつながっている月形樺戸博物館本館は、歴代の典獄や看守、囚人たちの生活や労働の様子が実物資料など500点余りで紹介されている。2階にはシアターコーナーや囚人の作業体験コーナーも設置されていた。当時の土木工事で、土地を耕しトドマツなどの丸太を敷く労働により、現在、直線道路の距離が日本一の国道12号線も囚人たちによって造られた道路だ。北海道開拓のより深い理解の一助にもなりそうだ。しかし道外からやってきた者が多かったのもあり、厳しい獄中生活や寒さ、重労働の道路整備や屯田兵屋の建設に耐えられず、1000人以上の囚人が亡くなったという。一人ひとり戒名をつけられ、博物館敷地外に埋葬され眠っている。
受刑者により、明治18年に建立されたという北漸寺が近くにある。本堂や正面に見られる繊細な木彫は囚人の手によるもので、月形町ならではの文化財のひとつだ。

「月形樺戸博物館」
整備された「旧樺戸集治監本庁舎」は、監獄への入口には見えない
囚人の出入りですり減ったとも言われる石段
時代背景や集治監の様子などが写真や模型で紹介されている
大工や木工の技術を持つ囚人により、本堂や書院などが建設された北漸寺

龍馬ゆかりの地・浦臼町
ワイナリー直売所を訪ねる

浦臼町は、樺戸集治監の囚人による増毛街道の開拓から始まったという。
月形の北漸寺から国道を15分ほど走ると、坂本龍馬家の墓がある。墓の横に案内看板があるものの、一度は気づかずに通り過ぎてしまった。蝦夷地開拓が夢だった龍馬の没後、意思を継いで甥の坂本直寛らが移住したその親族の墓だ。
浦臼町郷土資料館には開拓に汗した先人たちの文化遺産を多く展示している。1 階は浦臼の自然環境や開拓の歴史、産業の発達などを貴重な実物資料やパネルで学ぶことができる。2階は教育や文化の歴史がテーマだ。また直寛や実兄の直家の遺品などに併せて、龍馬に関する資料を展示して紹介している。希望すると職員の説明を受けることも可能だ。
道の駅つるぬまは、「うらうす温泉」に併設されている。昼食は、道の駅内のレストランでとることにした。お店やシェフのイチオシメニューに弱いので、おすすめの物を注文する。ほどなくテーブルに運ばれてきた、地元産の神内和牛あかを煮込んだハッシュドビーフは、肉や玉ねぎの甘味がデミグラスソースに溶けてなじみ、旨味が濃厚に凝縮されている。手軽にテイクアウトできる牛丼も人気があるそうだ。
食後は鶴沼公園の散策路をのんびり歩いた。充実したキャンプ場が自慢の自然豊かな観光スポットになっている。訪れているキャンパーらしきカップルが、水辺をジョギングしていた。穏やかな秋の一日だ。
国道を挟んだ向かい側にも、飲食店や物産館等が集まったゾーンがあるが、もとはこちらに道の駅があったそうだ。この裏手に浦臼神社がある。明治43年に落成した歴史ある神社で、浦臼町の開拓の碑もある。境内はカタクリやエゾサンゴサクの群生地で、シマリスやキツネの動物も見られるため、写真撮影のスポットにもなっているとか。
旅の最後に、鶴沼ワイナリー直売所に立ち寄ることにした。周りは広大なブドウ畑である。鶴沼地区の丘陵地に広がるワイン用ブドウ園は、日本有数の作付面積を誇っている。ちょうど取材時は、たわわに果実が実り風に揺れていた。ワイナリーでの製造工程の見学はできないが、直売所には棚にワインがずらりと並んでいる。もちろん、お土産のワインを買って帰ったのは言うまでもない。

坂本龍馬家の墓
意外な縁で結ばれていた龍馬家
「道の駅つるぬま」
レストランおすすめのハッシュドビーフ
夏から秋にかけてはキャンプで賑わう鶴沼公園
町の歴史をともに刻む明治43年落成の浦臼神社
日本ワインコンクールで数々の受賞をしたワインを気軽に購入できる直売所

月形町・浦臼町の旅マップ

月形町・浦臼町の主な福祉法人

社会福祉法人 月形町社会福祉協議会

樺戸郡月形町1064番地13 月形町交流センターつき・あえ~る内
電話(0126)53-2928  FAX(0126)53-2927

昭和63年3月、法人設立。地域福祉実践計画(あずまし計画)の策定を行い、そのひとつである「あずまし食堂」や「茶屋」の開催は、住民が「あずましい」と思える交流の場となり盛況です。人と人との繋がりを大切にし、安心して暮らせるように取り組んでいます。冬の除雪にはボランティア団体からの支援を頂いていますが、昨年度から月形刑務所の受刑者と職員の方も加わりました。

社会福祉法人 月形福祉会

樺戸郡月形町46番地30
電話(0126)53-4311  FAX(0126)53-4312

昭和58年12月、法人設立。ひとりひとりの人格を尊重し、気兼ねのない快適な生活を送れることを基本理念に掲げています。利用者さんに日々楽しんで貰えるように、多職種で意見交換し年間行事などを練り上げ、今年度は北海道の道の駅ラリーを意識して、「うまいものめぐり会食会」をおこなっています。安心・安全・快適な暮らしができるように、ご家族との連携を重視したサービスに努めています。

社会福祉法人 藤の園

樺戸郡月形町字当別原野417番地9
電話(0126)53-2214  FAX(0126)53-2923

法人設立は昭和45年9月。東京ドーム1個分の広大な自然豊かな土地に立地。自然とテクノロジーが同居する「明日のケア」を目指して、入居者さんの日々のケアに自然を取り入れ、介護ロボットやインカムの活用によりトレンドを予測した介護を行っています。ゆっくりとした時間の中で入居者さんの暮らしを支え、地域の中で必要とされる法人を目指しています。

社会福祉法人 浦臼町社会福祉協議会

樺戸郡浦臼町字ウラウシナイ183番地の27
電話(0125)69-2188  FAX(0125)68-2289

法人認可を受けたのは平成元年3月。平成26年から「寄り道サロン」を開催して今年度は週3回、住民同士が自由に過ごすことができる交流の場を提供しています。サロンには高齢者だけでなく、子育て中の人など多世代の人にも参加してもらう事が今後の課題です。

【vol.136閲覧中】

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