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福祉の現場から

vol.137

地域のフードドライブ活動

フードドライブとは、企業や団体ではなく、一般家庭を対象に、不要になった食品を集める活動のこと。近年は身近なボランティア活動として認知されつつあり、食品の回収コーナーを設けるスーパーやコンビニを目にする機会も多くなりました。フードバンクに続いて、フードドライブにも取り組み始めた社会福祉法人えぽっくを訪ね、活動の手ごたえや課題についてお話をうかがいました。

食糧事情にまつわる日本のちぐはぐ

まだ食べられるのに捨てられてしまう食べ物のことを「食品ロス」と呼びます。食品ロスには、食べ残しや使わずに捨てられてしまう食材など、家庭から発生する「家庭系食品ロス」と、小売店の売れ残りや返品、飲食店から出る食べ残しなど、事業活動の中で発生する「事業系食品ロス」があり、2021年度は両方合わせて約523万トンもの食品ロスが発生しました。それは、国連の食糧支援機関WFPが2021年に実施した食糧支援440万トンのおよそ1.2倍に当たる量です。
食品ロスが発生する原因はさまざまですが、その1つに日本の食品流通業界の習慣となっている「3分の1ルール」があります。これは、メーカーから卸売業者を通じて小売業者に納入されるまでの期限を、製造日から賞味期限までの3分の1以内とし、それを過ぎると納品できなくなるルールのこと。販売期限についても製造日から賞味期限までの3分の2以内としていることから、その期間を過ぎると賞味期限内であっても店頭から撤去され、返品または廃棄されることになります。
日本の食料自給率は先進国の中でも低く、多くの食べ物を海外からの輸入に頼っています。それにもかかわらず食品ロスが多い ”ちぐはぐな状況” は、早急に解決しなければならない社会的な課題ともいえるでしょう。

食品を集めて配る
フードバンク

食品ロスを減らすための対策の1つにフードバンクがあります。アメリカで1967年に始まり、日本では2002年に初のフードバンク団体が設立されて以来、その活動は全国各地へと広がっています。
フードバンクとは、パッケージの破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で、商品として販売できなくなった食品を企業などから譲り受け、地域の生活困窮者や食品を必要としている施設および団体に無償で提供する活動のこと。食品は家庭からも集めますが、主体は企業などの法人。提供先は、個人・世帯のほか、福祉施設や生活困窮者支援団体、子ども食堂など「個人を支援する組織」です。個人・世帯に限定して支援する活動はフードバンクではなく、パントリー活動と呼ばれています。

家庭の余剰食品を募る
フードドライブ

フードドライブは、フードバンクと連携して行われることが多く、日本では2013年に日本フードバンク連盟が設立されたのを機に、広く認知されるようになりました。「食品を募る」という点では同じですが、企業や組織が対象のフードバンクと違い、フードドライブはあくまでも一般家庭が対象。家庭で余っている食品を集めることが活動の目的です。そのため、フードバンクのように集めた食品を施設や個人に直接届けることはありません。社会福祉協議会や地域のフードバンクなど、組織や団体を通して、食品を必要とする人のもとへ分配される仕組みです。
なお、不特定多数の個人から食品を募るため、「未開封のもの」「賞味期限が2カ月以上あるもの」「常温保存ができるもの(米・農産物)」といったルールを設けるなど、リスク管理が不可欠。それ以外にも、食品の片寄り、運搬費用、検品・集計の手間など、いくつか課題はありますが、地域の人びとにとってフードドライブは缶詰1つからできる身近なボランティア活動。食品ロスの削減にもつながることから全国で活動の輪が広がっています。

社会福祉法人 えぽっく
生活困窮者支援の一環 フードドライブ 

2005年10月、南幌町に社会福祉法人えぽっくを設立し、障害者通所事業、短期入所事業、ホームヘルプ事業をスタート。以来、〝時代を切り開く〞などの意味で使われる社名の「えぽっく(epoch)」を象徴するように、高齢者支援、生活困窮者支援、地域の防犯活動など、時代や地域のニーズに応える形で活動の領域を広げてきました。
「当法人がフードバンクおよびフードドライブ活動に取り組むことになったのは、北広島市から生活困窮者自立相談支援事業を受託し、『きたひろしま暮らしサポートセンター ぽると』(以下、ぽると)を開設したことがきっかけです。当センターへ相談に来られる方の中には、明日の食料に困る方もいて、2016年3月より現在の『NPO法人フードバンクネットワーク もったいないわ・千歳』さんから食品を提供していただき、週1回、北広島市内の生活困窮者家庭へ食品を届ける取り組みを始めました」。そう教えてくれたのは、理事の向島久博さん。
その後、市内にある農家、団体、個人から食品の寄贈を受け、2020年に『フードバンクぼすこ』を開設。2022年からは定期的にフードドライブを実施するようになりました。

スーパーに回収箱を設置
食品の寄贈を呼びかけ

2023年5月には、アークスグループと連携し、スーパーアークス大曲店にフードドライブの回収箱を設置。その後、系列の東光ストア4店にも回収箱を設置したことで、活動範囲が一気に広がりました。
「当事業所には、飲み物、お菓子、缶詰、レトルト食品など、フードドライブで集めた食品と合わせて、多いときで1ヵ月に約200キロの食品が寄せられます。農家さんからのお米や野菜は、量も多いため助かっています」と話すのは、ぽるとの相談支援員を務める今井正昭さん。
回収箱に入り切らないため、直接事業所に届けてくれたり、量が多いので取りに来てほしいと電話をくれる人もいるそうで、人びとのそうした動向からフードドライブが徐々に周知されつつあることがわかります。ただ、生ものなどは回収できないため、寄贈される食品は種類が限られ、集まる量も週によって違うなど、課題も少なくありません。

農家さんや企業から届いた大量の食品

地域の課題に挑むことが社会福祉法人の役目

同法人では、食品の回収から配布まで一連の活動に取り組んでおり、集まった食品は『フードバンクぼすこ』を通して、生活困窮者や福祉施設などに提供されます。ぽるとの主任相談支援員・酒井美弥さんは、「ぽるとに登録されている方は約1,200 名。現在、食糧支援が必要な15世帯に、週1回のペースで食品をお渡ししています」と教えてくれました。
登録者だけでなく、年金支給日までお金が持たない、借金返済で生活費が足りないなど、緊急性の高い人への食糧支援を市役所などから要請されることもあり、同法人ではそうしたケースにも迅速に対応しています。
「11月に北広島市内にある小学校のお祭りでフードドライブを実施しました。事前にチラシを配って告知をしていたこともあって、1日で約15キロの食品が集まりました。今後もこうしたイベントに参加し、地域に開けた社会福祉法人として活動していきたいと考えています」と、理事長の松坂優さん。
フードドライブを通して、新たな課題も見つかり、「これまで見えなかったことが見えてきたという意味でも、意義のある活動といえます。たとえば、食糧支援の対象者に外国人技能実習生がいることも、この活動をやらなければわかりませんでした」と、話しています。
そこから端を発し、外国人向けの日本語教室や災害研修会を実施。2023年11月に、松坂さんがNPO法人と協力し、ベトナムのクアンニン省へリユースした車椅子を運搬したのも、在留外国人支援がきっかけです。
「有効な制度の有無に関わらず、地域の課題に向けて、一歩を踏み出すことが社会福祉法人の役目であり、えぽっくの原点です」。これからの時代を見据え、松坂さんは最後にそう語ってくれました。

地元の農家さんから寄贈されたお米

社会福祉法人 えぽっく

北広島市輝美町2-3
TEL 011-373-8880 FAX 011-373-8810

2012年7月、法人本部を南幌町から北広島市に移転。障害福祉サービス事業として生活介護などの通所支援、地域生活支援センターを軸としたグループホームの運営、ホームヘルプサービス、介護サービス事業として認知症対応型グループホームの運営などを行っています。2015年に生活困窮者自立相談支援事業、2018年に一時生活支援事業を北広島市から受託。2020年には札幌市から一般相談支援・特定相談支援・障害児相談支援事業の指定を受け、札幌市厚別区を中心とした相談支援事業を開始しました。事業所も北広島市を中心に、南幌町、札幌市、恵庭市、室蘭市と各地に広がっています。

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