職員インタビュー
vol.120
職員インタビュー(社福)北檜山恵福会 特別養護老人ホーム「きたひやま荘」(生活相談員)
おばあさんが示してくれた福祉への道
生まれも育ちもせたな町だという生粋の「せたなっ子」の並川さん。その並川さんにとってせたな町はどういう町なのでしょうか。
「海も山もすべてそろっている町です。海産物は何でも獲れるし、農業はお米が主流です。私の家も農家なので休日は私も水田をやっています」。
農家に育った並川さんが福祉の仕事に進んだのは、何がきっかけだったのでしょうか。
「高校を卒業するときに祖母に『福祉の専門学校に行け』といわれたのがきっかけです。そのころ警察の人がうちによく来ていて、警察官にならないかと誘われたんですけど、祖母が反対して、この子はそういう性格ではないので、福祉の仕事に向かわせようと思っている、と言って断ったんです。2週間前にその祖母が亡くなったんですけど、そんなことを先週は思い出しながら過ごしていました」。
おばあさんは亡くなるまで、自分のことは全部ひとりでできる人だったそうです。ですが、腰は曲がって耳も遠くなっていたようです。「病院で受診するときも、先生が言ったことが分からなくても、私が横で話せば分かってくれました」。
職場に安心感を与える存在でありたい
おばあさんのすすめるままに栗山町の社会福祉専門学校に進んだ並川さんは、生まれ育ったせたな町で就職しました。介護福祉士の資格を取っていた並川さんは、最初は介護職でした。
「その当時は寮父という名前だったんですけど、その仕事を7年やって、7年間のうちに社会福祉主事の資格とケアマネジャーの資格を取りまして、今、相談員をやっています。私の仕事は、現場で職員も入居者もみんなで笑ってもらえるような雰囲気を作ることだと思っています」。
相談員になってから直接利用者さんと接することは少なくなったのですが、人と接することそのものが相談員の仕事だといいます。「自分の中では、本当の身内のような雰囲気で働かせてもらっているような気持ちです。そういう雰囲気で対応すれば、素直に何でも言ってくれるし、コミュニケーションもとれます」。
職場の良い雰囲気づくりをいつも心がけている並川さん。自分が施設の中にいることで、入居者にも職員にも安心してもらえるような存在でありたいといいます。そういう気持ちは常に持ち続けています。「看護師さんとか介護職員は汗を流して一日中動きっぱなしなので、今年みたいな暑い年には、人数分のアイスクリームを買ってきて『これ、みんなで食えよ』と言って渡したりすれば、雰囲気も変わってきますよね。私はそういうことをしたいほうなんです」。
入所者には当然、喜んで過ごしてもらわなければならない。職員にも笑っててほしい。笑えるということは、まだ気持ちに余裕がある証拠。その余裕をなくさないように笑って仕事してもらえれば、最近よく聞く虐待なんかも防げるんじゃないかといいます。
「情けは人の為ならず」やさしさを忘れずに
ー趣味は何ですか、休日は何をして過ごしていますか。
「趣味は、お酒も好きですし、車とかバイクとかも好きです。農家なので今はほとんど休みの日は田んぼや畑に出ています。仕事の気分転換にもなっていますね」。
ー後輩にはどんな言葉をかけてあげたいですか。
「やさしい気持ちだけは忘れないでくださいと言いたいです。よく諺で『情けは人のためならず』っていいますけど、私は、その後があるんだよと、たまに言うんです。「巡り巡りてわが身に返る」っていうんですけど。思いやりというか、一生懸命人に尽くせば、自分もやって貰えるからやるわけじゃないんですけど、人が笑って一日でもいい日を作ってくれれば、それが自分の幸せだっていうか、そんな気持ちはあります。入居者と話したりしているときとか、知らず知らずにポロっと泣けるときがあります。幸せそうな笑顔を見たときに、なんとなくジーンと来る時があるんです」。
話を聞いていて、温かさがひしひしと伝わってきます。人に天職があるとすれば、福祉は並川さんにとって天職じゃないでしょうか。おばあさんはそれを見抜いていたんですね。




社会福祉法人 北檜山恵福会
遠郡せたな町北檜山区豊岡337-1
電話(0137)84-5557 FAX(0137)84-5297
特別養護老人ホームきたひやま荘/きたひやま荘短期入所生活介護事業所/
デイサービスセンターきたひやま/北檜山生活支援ハウス「ぬくだまり」
昭和62年法人設立、翌63年にきたひやま荘を開設しました。天然温泉を使用した大浴場が自慢で、身体の不自由な方も安心して入浴できる広い特殊浴槽室も完備しています。地域の方々との交流も多く、老人クラブは年2回、幼稚園・保育所は各2回、小学生は1回来荘、9月14日・15日の真駒内神社の例大祭には神輿や花山が来てくれて伝統舞踊等を披露してくれます。人口の減少とスタッフ不足は深刻で、入所者の介護度は特例の2や、ぎりぎり3が多い。そのため地域密着型小規模特別養護老人ホーム「せたな雅荘」は今春、閉鎖することになりました。今後、入居者が安心、安全に過ごしていただくためには、スタッフもお金も限界があるため、すべての枠を超えて町全体で協力し合いながら施設運営をしていかなければならないと考えています。

その他の記事を読む
-
Vol.133 2023.Winter
職員インタビュー(社福)根室敬愛会 (介護福祉士)
根室市で唯一の特別養護老人ホーム「はまなす園」で介護主任として働く野村えり子さん、大橋勇一さんは、ともに異業種から転職してきました。 -
Vol.132 2022. Autumn
職員インタビュー(社福)池田光寿会 特別養護老人ホーム池田光寿苑(ケアマネージャー)
介護の仕事に就いてから今年で18年目。現在、ケアマネージャーとして働く髙嶋さんのキャリアは、地元帯広から車で約1時間半のところにある広尾町の特別養護老人ホームから始まりました。
高校2年のある日、要介護5程度の状態だった曽祖母と過ごし、「何もできない自分がもどかしかった」と、介護技術の必要性を痛感。ゆくゆくは両親の介護にも役立つと思い、この道へ進むことを決めたそうです。
広尾の特養には4年ほど在籍し、家の事情で帯広へ戻ってきた髙嶋さんは、介護老人保健施設や有料老人ホームで、介護士としての経験を積み重ねていきます。その後、デイサービスの事業所に移り、生活相談員を務めたことで仕事の場も広がりました。