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福祉の現場から

vol.128

農業と福祉のWin・Winの関係農福連携の取り組み

社会福祉法人 北ひろしま福祉会 指定障がい者支援施設就労センタージョブ
農業と福祉施設、双方の課題を克服し、利用者の雇用先の確保、社会参画の促進、農園側は働き手の確保、作業工程の見直しによる生産性のアップにつながっています。
北広島市の農家と契約を結び、農福連携を始めている就労センタージョブの引率職員と利用者、農園主の三者に話を聞くことができました。
農福連携の実態を取材し、その効果や今後の課題が見えてきました。

農福連携とは…

農福連携とは、農業と福祉が連携し、農業経営の発展とともに、障がい者や高齢者の自信や生きがいを創出し、社会参画を促す取り組みです。農業経営者による障がい者の雇用、障がい者就労施設等による農業参入、作業受託など様々な形が見られます。
2015年(平成27年)に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」においては、農作業による心身の健康増進の効果等に着目し、障がい者や高齢者、生活困窮者の自立を支援するための福祉農園の拡大、定着等を推進することとしています。また、2018年(平成30年)には「経済財政運営と改革の基本方針2018」や「未来投資戦略2018」においても、農福連携が位置付けされており、全国各地で取り組みが広がりつつあります。
農業分野においては、農業従事者の高齢化と労働力の確保は喫緊の課題となっています。農福連携を通じて障がい者の農業への参画が促進されれば、働き手の確保や荒廃農地の解消だけでなく、受け入れのために障がいに応じた作業を提供することが生産工程や作業体系を見直す機会となり、農業生産の拡大、効率化につながる効果が期待できます。
福祉分野においては、就労先の不足や工賃・賃金の低さが課題となっています。農福連携は、障がい者の働く場の確保や工賃・賃金の向上に加え、心身の健康増進や地域交流の促進等の社会参画の場の拡大、障がい者の生活の質の向上が期待され、自立支援となる重要な取り組みです。
農福連携は、農業と福祉の双方にメリットのあるWin・Winの関係を構築する取り組みとして全国的に広く展開し、農福連携が当たり前のこととして定着することが期待されています。

就労センタージョブ

竹内農園との出会い

就労センタージョブでは、6年前に北広島市から農福連携について法人に話があり、紹介されたのが竹内農園でした。作業の内容など、どういう取り組みをしているのか、農場見学にも行きました。
「私たちは、事業としてパン作りやお弁当販売など、食品を扱う作業をしており、食材の取引を含め、施設外就労にも携われればと考え、業務受託契約を結ぶことになりました。竹内さん自身が福祉施設の職員だったという安心感もありました」。
合同会社竹内農園の代表を務める竹内巧さんは、大学卒業後、大手二輪車メーカーに就職。静岡・インドのニューデリーで勤務する中で、都市の活気を肌身で感じた一方、北海道は人や資源が出ていくばかりの現状に悔しさを感じました。北海道の地の利を生かした農業を新しい方法でやってみたいと思い、民間企業で学んだ適材適所を念頭に、農業と地元で暮らす高齢者や障がい者を融合させた事業展開を模索し始めます。民間企業を退職し、札幌の障がい者支援施設に転職。農業と福祉に出会います。その後、2014年(平成26年)に農業経営を開始。開設当初から農園近くの福祉施設と業務契約を結び、農業と福祉を融合させた農業を実践しています。当時はまだ、農福連携という言葉は一般的ではありませんでした。

竹内さん(左)と利用者さん「今日も一日がんばるぞ~」

工程を細分化し、利用者が手作業で行える作業を創出

「竹内農園では、オートメーション化していない部分で、細かく作業を細分化して、利用者さんに合った手作業を考えてくださっていて、とても親身になっていただいていると感じています」。
竹内農園では、作物の選定から福祉的な視点を取り入れ、大型機械を要する作物は除外。農機具は小型農機を導入し、利用者の安全を考慮したうえで、できるだけ手作業で行えるよう作業工程を細分化・単純化し、利用者の適性に応じて働ける環境を整備しています。
農園に行く利用者さんは6名。そのうち2、3名がローテーションで農園に行きます。利用者さんが農業の現場に行くことへの不安はなかったのでしょうか。
作業の内容というよりも、暑い中での屋外作業なので、体力面に関して心配がありました。ただ、複数の利用者さんの体力を考えて、半日の作業の方もいれば、一日作業をしていただく方と調整をしながら作業を進める形で、竹内さんにも協力していただけたので、利用者さんの負担が大きくなってしまうことはありませんでした」。
竹内農園では、15種類ほどの野菜を栽培し、年間200日ほど出荷作業をしています。作業は屋外での畑作業と、屋内での計量、袋詰めなどの2つに分かれます。炎天下の日は屋内での作業を増やし、雨の日はビニールハウスでの作業をするよう可能な限り気を配っています。
働く時間と日数も、一週間前にスケジュールを竹内さんに確認してもらい決めています。

トマトの収穫にやりがいを感じます

農園の作業に従事する女性の利用者さんにも話が聞けました。
― いままでに農作業の経験はありますか。
はい、あります。小学校から高校まで畑作業があって、12年間やってきました。
― いま、農園ではどんな作業をしていますか。
トマトの収穫とニンジンの草取りをしています。
― 農作業には、いろいろな作業があると思いますが、どんな作業が一番楽しいですか。
やりがいを感じるのは、トマトの収穫です。
― 反対に、辛いと思う作業はありますか。
ニンジンの草取りが苦手です。草とニンジンの見分けがわからないときがあります。
― あなたが収穫した野菜を施設の仲間たちがお弁当やレストランで調理してくれることをどう思いますか。
とてもうれしいです。私もお弁当のとき、インゲンやスナップエンドウを食べたことがあります。家族にも食べてもらいたいです。家族にも農作業について話しました。母には『がんばってるね』とか『体力をもうちょっとつけた方がいいよ』と言われました。
― 自分では、体力面で元気になったと思いますか。
はい、思います。
一語一語、丁寧にはっきり答えてくれました。
法人が運営するレストラン「グリーンパーク」、弁当製造・販売「まんぞく屋」、ヒロパンでも竹内農園で収穫した野菜を使ったメニューの開発を進めています。
「お弁当に、『本日のお野菜は竹内農園のものを使っています』というシールを貼ったりしてお客様にPRしています」。
農作業を通じて利用者に変化があったと感じることはありますか。
「農園に行ってみて初めて分かることとしては、何が得意で、何が苦手かがやってみないとわからなかったことです。自分の得意なことが見つかったら、それでやりがいを感じて頑張れています。苦手なことでも、やりたくないと言わずに自覚を持ってちゃんとやれているところが一番良い変化だと思っています。普段の生活では、積極性が出てきたのを感じます。農園が始まる前と後では、イキイキしている感じが違います」。

収穫したトマトを運ぶ利用者さん

農福双方が歩み寄り長く続ける環境づくりが必要

「竹内農園では何でもトライ&エラーだと思っています。やってみて、できなかったら修正していこう、良かったら来年度も続けようと、毎年のチャレンジを心掛けています。そうすることで、工賃は前年にお支払いした金額よりも増えるよう努めています。これを効果というのであれば、農家としての可能性も広がってきているということだと思います」と竹内さん。
これから農福連携を考えている農家、福祉施設双方に対して、何が必要かアドバイスはありますか。
「一言では言えませんが、お互いが歩み寄ることだと思います。相互にコミュニケーションを重ねる中で、農家と事業所が理解し合い、良い関係を築いていければいいですね。極力長く働ける環境を作っていくということが必要だと思います」。
障がい者に対する視点という部分では、福祉施設で知り合った奥様の存在が大きいと竹内さんは言います。福祉の専門的な部分に関しては、奥様の助言に負うところが多いそうです。
農家と福祉事業所が連携を始めているところは北広島市内にも増えています。全道、全国でもその波は確実に広がっています。農福連携を成功に導くには、極力長く働ける環境作りと、お互いの信頼関係が何より必要だということがわかりました。

竹内農園産インゲンを利用したお弁当とシール

社会福祉法人 北ひろしま福祉会

北広島市朝日町2丁目6-9
電話(011)373-8809 FAX(011)373-8673
【障がい者支援事業】とみがおか/共栄/グリーンパーク北ひろ/就労センタージョブ/北広島セルプ/北広島デイセンター/居宅介護等事業所フィットマン/児童発達支援・放課後等デイサービスつなぐ【介護保険事業】特別養護老人ホーム東部緑の苑/デイサービスセンターヴェール/ケアプランセンター東部緑の苑【共生型事業】ふれあいステーションほっと

昭和23年、宗教法人天理教として精神薄弱児施設を創設。昭和24年、財団法人富ケ岡学園として法人登記。昭和27年、財団法人から社会福祉法人富ケ岡学園に改正。昭和49年、社会福祉法人富ケ岡学園から社会福祉法人よふき会に法人名変更。平成15年、現在の社会福祉法人北ひろしま福祉会に法人名を変更しました。

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