福祉の現場から
vol.127
福祉の精神に通ずるSDGsの理念SDGsと福祉サービス
社会福祉法人 南幌福祉会 特別養護老人ホーム南幌みどり苑
SDGsは、貧困や不平等、飢餓といった問題から、働きがいや経済成長、気候変動、まちづくりに至るまで「21世紀の世界が抱える課題」を包括的に掲げています。
SDGsの本質的な理念は福祉の精神に通ずるものも多く、福祉従事者が今提供しているサービス自体がSDGsだと認識し率先して取り組むことが求められています。
SDGsとは・・・
最近、新聞やテレビでよく見聞きするようになったSDGs(エス・ディ・ジーズ)はご存知でしょうか。「SustainableDevelopment Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193ヶ国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた国際社会共通目標です。17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。
南幌福祉会がSDGsに取り組み始めたきっかけは何だったのでしょうか。南幌みどり苑の佐久間竜太施設長と島由樹業務係長に話を聞きました。
「令和元年に島係長がミュージシャンのハジ→の楽曲『SDGs for LIFE』を聴いて興味を持ち、調べ始めたのがきっかけです。私もセミナーなどでSDGsというキーワードが飛び交うようになり調べ始めました。調べてみると、企業としても同じ方向を向いて取り組んでいく必要があると改めて認識しました。中身を見ると、我々福祉従事者が普段取り組んでいることがSDGsの理念に沿ったもので、それを認識して可視化できていないことが課題だと思ったんです。職員教育をしている我々が国際的な理念に沿っていかないとダメだと認識して、法人として動き出そうと決意しました」と佐久間施設長は語ります。
「事業計画書の中では9項目を掲げています。ポイントとしては3番、4番、8番(SDGsの17の目標参照)です。コロナ禍で利用者さんの受け皿がかなり減っています。3番は〝すべての人に〟ということで、ここに居る利用者さんだけでなく、町内外を問わず緊急で施設を利用したいすべての人を救おうと町立南幌病院とも協力して対応しています。これはSDGsということではなく、そもそもやっていたことの中で、今後もやっていかなければならないことです」。10番、11番に関しても、元々やっていたことをさらに発展させていきたいと島係長は思っています。


SDGsに取り組む福祉業界のメリット
SDGsは、一般の方々の福祉業界への見方を変えるツールになると佐久間施設長は言います。
「SDGsは判断基準の1つのツールとして利用できます。事業計画を立てるときに、自分の基準で判断するのではなく、判断基準を自分以外の所に置くことで、利用者さんや職員にとって最善の判断ができるようになりました」。
経営者側だけではなく、職員にとっても働く目標設定の一つとなり、双方にメリットがあるツールです。
「SDGsに取り組んでいる法人としてのブランディング(企業イメージの明確化)になりますよね。どうせ働くなら、こういう施設で働きたいと思ってもらえる。それが人材確保の一つになることを期待しています」。
国際的に掲げている目標を意識することは、国際貢献ができていると職員も誇りを持てますので、働きがいになります。佐久間施設長は、社会福祉全体の底上げとして、将来的にはそれが標準となることが最終的な目標だと言います。

介護の楽しさを伝えたい
介護業界にいると「大変だね」「きついんでしょう」と言われることが多いといいます。
「それが『楽しいんでしょう』と言われるように、発信できるものを作っていかないと介護業界は変わらないと思うんです。3大介護といわれる排泄、お風呂、食事も生活の中の一部にすぎません。大変だというところばかり注目されがちですけど、施設に入ることイコール人生を請け負っているんですよね。自分たちも楽しいことをして生きているのに、施設に入ったからといって、それができなくなるのは絶対おかしいし、私たちと同じ生活が送れないこと自体がおかしいんです。全部叶えることは難しいかもしれませんが、少しでも叶うように近づけることが介護だし、その時に生まれる利用者さんの楽しみや笑顔が介護なんだと私は思います」と島係長。
職員主体で運営する good楽っく委員会
業務改善を考える中で、やりがいを見つけていこうと現場の職員が主体となって運営する委員会が生まれました。ただただ利用者さんの楽しみや幸せを願い、利用者さんが楽しくなることで職員も楽になり、楽しくなるという意味で〝good楽っく委員会〟と名付けられました。アイスキャンドル作りやコロナ禍で外出できない利用者さんが花や野菜を育てたりなど、一人3個くらい年度当初にアイデアを持ち寄ります。利用者さんに添った、利用者さん思いの気持ちをみんな抱えていて、なるほどなという企画も多いといいます。実習生にも事業計画書を渡していて、未来の大事な人材を育成できるように一丸となって取り組んでいます。
島係長は、実習生だけでなく、職員全員に「その人をできない人間にしないで頂戴」ということを言っています。
「介護業界って、できないことをお世話したくなるんですよね。車椅子で自分で移動できる状態の人がいるとします。一言で表すと、歩けない人と言うこともできますが、車椅子を自分で漕げる人と言った方が、可能性が広がります。視点を変えることで利用者像が変わります。私は後者の視点で伝えてくれる人の方がカッコいい介護者だと思います」。
介護レンジャーが 3Kを払拭
人材確保のために、3K(汚い、きつい、給料安い)という介護業界のネガティブなイメージをポジティブに変えていこうと介護レンジャーという企画を考えました。
「感謝、感動、カッコいいの3Kに変え、感動レッド、感謝ブルー、カッコいいグリーンと名付けて、「みどり苑まつり」という施設のお祭りで職員による寸劇を披露しています。2025年問題(介護従事者が35万人以上不足する)もある中で、福祉の人材が一人でも多く育ってくれることを祈っています」。
みんなで同じ問題意識を持って取り組まないと、2025年問題に立ち向かえなくなると佐久間施設長は危機感を募らせています。南幌福祉会には、今後も福祉業界の牽引的立場で、SDGsの普及に努めていただきたいと思います。


社会福祉法人 南幌福祉会
空知郡南幌町元町2丁目2-2
電話(011)378-1556 FAX(011)378-1526
特別養護老人ホーム南幌みどり苑
南幌みどり苑デイサービスセンター
南幌みどり苑居宅介護支援事業所
「南幌福祉会は、人々が幸福になるために存在する」ということを基本理念として掲げています。このシンプルで力強い宣言は、法人の責任感と決意の表明のようです。その内容は、利用者様だけではなく、ご家族の幸福、地域の皆様の幸福、職員とその家族の幸福、さらに、法人に関りを持っていただいているすべての人の幸福を意味しています。
行動指針としては「自分や家族が入所したいと思える施設づくり」「自分や仲間が働きたいと思える施設づくり」「地域や住民から必要とされる施設づくり」です。また、SDGsは福祉に通ずる部分が多いとして、積極的にその活動を推進しています。今、福祉が取り組んでいること自体がSDGsなんだと、他の福祉従事者に対しても率先して協働を呼びかけています。

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