小さな旅

湯気の向うに絶景あり、癒しあり、グルメあり 早春のはこだて湯の川

(左)トラピスチヌ修道院の桜はゴールデンウィークころが見頃。(右)まるで人間のようにくつろぐ函館市熱帯植物園の温泉のサル。

(左)トラピスチヌ修道院の桜はゴールデンウィークころが見頃。
(右)まるで人間のようにくつろぐ函館市熱帯植物園の温泉のサル。

湯川漁港から臨む函館山の姿が美しい

 函館の旅といえば、五稜郭公園や金森倉庫群のお洒落なベイエリア、西部地区の坂道など見どころは枚挙にいとまがない。桜の名所も多いのだが、今回の春の旅では温泉地・湯の川地区を訪ねてみた。
 晴れマークひとつの予報に恵まれた朝、漁火通りに面した湯川黒松林から旅をスタートした。
津軽海峡から吹きつける強い潮風が舞い上げる砂丘海岸の砂を防ぐために、金森倉庫の創業者が私財を投じて明治時代に苗から造林したそうだ。今は900本以上のクロマツが林立する市民公園となっている。
 近くにある湯川漁港からの眺めが素晴らしいと聞いたので行ってみた。旅館やホテルの展望風呂からの眺めもいいが、海をもっと身近に感じるなら遊歩道のある親水防波堤に上るといい。目の前に広がる津軽海峡、右手に函館山と大森浜、左手に温泉街から汐首岬にかけての景色が眺望満点だ。散策や写真を撮る人、釣りを楽しむ人もいて、穴場的スポットとなっている。
 温泉街の中をぬけ、湯川寺とうせんじへ向かう。かつて函館山にあった三十三観音が、戦争時の要塞化に伴い湯川地区に移され、昭和50年からは境内に遷座されたという。自由に参拝することができる観音像は、春の日差しに淡く揺らいで、お顔も穏やかに微笑んでいた。
湯倉神社へは、寺からゆっくり歩いても数分だ。室町時代にこの地の温泉を発見したことに始まる歴史があり、湯の川温泉の守り神としても広く親しまれている。神社なので社務所ではお守りやおみくじを取り揃えており、なかでも目をひくのが、ユニークな「イカすおみくじ」だ。イカや鯛の形をした張り子におみくじが入っていて、竿で釣りあげるというもの。道内10神社に、ご当地「えぞみくじ」としてニシンやサンマもあるとか。くじの文章は北海道弁で綴られているので、たとえ多少運勢が悪くとも親しく受け入れたい。
 市電停留所「湯の川温泉」のそばに、足湯「湯巡り舞台」がある。地元市民も観光客も集う、文字どおりホットスポットだ。年中無休で無料。足拭きタオルを持参して、気軽にのんびり市電の走る街並みを眺めながら暖まってみるのもオツなものだ。
旧戸井線は五稜郭駅から戸井駅までを結ぶ予定だったが、昭和17年に中断したまま未完成の鉄道路線遺構だ。線路跡は遊歩道になっており、トンネルやアーチ橋が現存している。この日も地元の方が、犬の散歩やジョギングにと普段の暮らしで利用されていた。

市民や観光客に親しまれる湯川黒松林
公園としても市民や観光客に親しまれる湯川黒松林
湯川漁港から臨む函館山の姿が美しい
湯川漁港から臨む函館山の姿が美しい
春の日差しにたたずむ三十三観音像
春の日差しにたたずむ三十三観音像
湯川温泉発祥の地、湯倉神社
赤い鳥居が青空に鮮やかな湯川温泉発祥の地、湯倉神社
自分の好きな種類の張り子おみくじを竿で釣り上げる
自分の好きな種類の張り子おみくじを竿で釣り上げる
足湯を目当てに訪れた観光客と散歩がてらの地元の方がひと休み
足湯を目当てに訪れた観光客と散歩がてらの地元の方がひと休み。
小ぶりなアーチ橋も残る旧戸井線
小ぶりなアーチ橋も残る旧戸井線

絶品のパスタを食べて修道院のある高台へ

 昼食は、美味しいパスタを食べられると地元でも評判の「アペティー」に向かった。松倉川沿いにあり窓から海も見える、創業25年のお洒落な外観の老舗だ。オーナーが地元の「自由市場」で仕入れる新鮮な魚介がたっぷり入った「ペスカトーレ漁師風」を注文した。イカ、エビ、貝類がプリプリ食感で、とくに大きな帆立が身も厚くて感動する。具材の海鮮からのダシが効いていて、ほどよい固さに茹で上がった麺とソースを絡めると、その旨味が店名どおりに食欲(フランス語でアペティ)を満足させてくれた。
 食後は「コーヒールームきくち」に立ち寄り、ソフトクリームをテイクアウトした。香りと酸味が独特のモカはシャリシャリ感もあり、一番人気というのも納得の味だ。
 すこし足を伸ばしてトラピスチヌ修道院へと向かった。市街地と函館山を挟んで対面する高台に、赤レンガ造りの建物が異国情緒もたっぷりにたたずんでいる。明治31年にフランスから派遣された修道女によって創立された日本最初の女子修道院だ。4月下旬から5月にかけ、白いマリア像に映える桜の見ごろとなるが、取材のこの日には残念ながらまだ蕾もなかった。売店にはおなじみのバターやクッキーのほかに、手作りのロザリオやネックレスが並んでいる。隣の資料室も見学できるので、修道女らの院内での暮らしや歴史なども知ることができ興味深い。
 修道院とは目と鼻の先ほどの距離にある「市民の森」にも行ってみた。「見晴しの丘」「ミズバショウと木の道」「ピクニックの丘」など、自然を満喫できる見事な空間が形成されている。なかでも約1万3千株の「アジサイ園」は、6月下旬から9月まで、早咲きから遅咲きまで長く楽しめる。

「アペティー」のペスカトーレ漁師風
ボリュームもたっぷり「アペティー」のペスカトーレ漁師風
口あたりさっぱり「きくち」のモカソフト
口あたりさっぱり「きくち」のモカソフトが大人気
大天使聖ミカエル像がトラピスチヌ修道院の門を入ると出迎えてくれる
大天使聖ミカエル像がトラピスチヌ修道院の門を入ると出迎えてくれる
咲き誇る「市民の森」のアジサイ園
咲き誇る「市民の森」のアジサイ園
写真提供:函館市公式観光情報サイト「はこぶら」

常夏の大温室とサルの温泉に癒される

「函館市熱帯植物園」は、温泉街の海沿いにある。入ってすぐの左手にはサル山があり、正面にガラス張りの大きな温室がある。施設内はもちろん常夏だ。ジャスミンやハイビスカスの香りが広がっていた。北海道ではなかなかお目にかかれないビワがたわわに実っていた。バナナやマンゴーの木は、タイミング良く実がなっていると、試食も可能かもしれない。スタッフのスケジュールがあいていれば、ガイドを頼める可能性もある。疑問に思ったことなどをいろいろ質問すれば、より興味深い観察ができそうだ。
 のぼせるような温室を出て、楽しみにとっておいたサル山へと足を向けた。正月のニュース等でも紹介される、サルの温泉があるのだ。冬からゴールデンウィークまでの間は、サルの温泉入浴を見ることができる。まるで人間と同じような表情や仕草が見る者を和ませてくれる。
 柵には多くの見物客が並んでいた。入口で買ったエサを、景気よくバサーっと投げると数匹が集まって喜んでくれる。こっちにもくれという顔をするので、そっちにもバサーっと投げる。そういうサルを観察しているときに気づいたのだが、体毛がひどく禿げているものが何匹もいる。毛がないから皮膚が露わになってガリガリにも見える。ボスや先輩に毟られたり、いじめられているのだろうかと心配した。ところが帰りにスタッフに聞いてみると、「毛が禿げているサルは温泉の入り過ぎで毛が抜けるんです。温泉が終わって6月頃になると毛が生えてきますよ」と説明をしてくれ、ほっとする。今度は、ふさふさのサルに会いに来ることにしよう。

南国の珍しい植物をはじめとした300種、3000本の熱帯植物が植えられている
南国の珍しい植物をはじめとした300種、3000本の熱帯植物が植えられているほか、温室を抜けるとちびっこ広場もある。
びわ
熱帯植物園のびわ

はこだて湯の川の旅マップ

はこだて湯の川の旅マップ
湯川町周辺の主な福祉法人

社会福祉法人 函館厚生院

函館厚生院法人本部
函館厚生院法人本部

函館市本町34番8-1
電話(0138)51-9588 FAX(0138)55-9693
【病院】3施設 【看護学校】1校 【児童福祉】1施設 【高齢者等入所施設】8施設 【地域相談窓口】2施設

 明治33年(1900年)、老弱者の収容救護を第一歩として函館慈恵院を創設したことから始まった社会福祉法人です。昭和21年(1946年)に「函館厚生院」と改称しました。法人創立の精神である「慈しみのこころ」を基本理念に掲げ、地域に寄り添い「いつでも安らぎを」という標語のもとで、時代の要請に応えていく保健・医療・福祉の融合を目指しています。令和2年(2020年)12月、第一期生としてインドネシアから6名の技能実習生を迎え、湯川町にある「ケンゆのかわ」とほか2施設で3年間、介護の技術と日本文化を学んでいます。今年度はインドネシアとオンラインでの面接を実施して、5月に新たに6名の技能実習生を迎えます。

社会福祉法人 貞信福祉会

貞信ファームでの収穫作業
サツマイモの収穫作業

函館市深堀町27番2号
電話(0138)33-0033 FAX(0138)33-0066
函館上湯川保育園/函館深堀保育園

 「報恩感謝」「常識涵養」「実践躬行」の3つの理念を掲げ、昭和47年(1972年)に法人設立。この理念は子どもたちにもわかるように次のように表現しています。「おとうさん おかあさん ありがとう/すなおにただしくおぼえましょう/すすんでよいこと いたしましょう」
 園と保護者が手をつなぎ、子どもの成長を一緒に喜び合える教育、保育を進めています。平成15年(2003年)に体験学習農園として貞信ファームを開園し、3968平方メートルの敷地で、十数種類の野菜や果物を育てています。自然にかかわることで豊かな心を育て、のびのびと楽しんでいます。令和3年度で法人設立50周年を迎え、令和4年3月に絵本のような記念誌というコンセプトのもと、「はぐくむ」という記念誌を発刊しました。